明けましておめでとうございます。2018年をスタートするにあたり、Campaignでは様々な識者による今年の展望を紹介する。
レイ・イナモト氏は、広告代理店がなぜ方向性を誤ってしまったのか、そしてそれをどう修正すべきかを論ずる。エリック・イングボルドスタッド氏は、広告界全体が「一から出直すべき」と主張。小山聡介氏はテレビ界の大刷新を予測し、林英恵氏は女性のキャリアアップを依然妨げる根深い性差別について指摘する。アンソニー・ベイカー氏と吉川昌孝氏は、会話型アシスタントやブロックチェーンといったテクノロジーがもたらす変革に着目。そして十河宏輔氏は、AIがマーケティングビジネスを既に決定的に変えたと述べる。
では、今週マーケティング界で起きた主なニュースをお届けする。
広告主は「自動転送詐欺」で年10億ドルの損失
広告の安全性を検証するジオエッジ社のリポートによると、ユーザーのブラウザを意図せぬロケーションに転送するハッカーの仕業で、全世界の広告主は年に11億3千万米ドル(約1280億円)の損失を被っているという。自動転送されたブラウザでユーザーがマルウェアをダウンロードしたり、ワンクリック詐欺の被害に遭ったりすることもしばしば。こうした詐欺は主に携帯電話で蔓延している(iOSが57%、アンドロイドが15%)。ジオエッジは、「広告主は広告代理店やアドネットワークに最善策を講じさせる義務がある」と述べている。
アクセンチュア、大手広告代理店グループ買収の噂を一蹴
アクセンチュアがWPPクラスの大手広告代理店グループ買収に乗り出す −− そんな噂が昨年から飛び交っているが、同社のピエール・ナンテルム会長兼CEOは決算報告の席上、「そのような試みは決して成功しない」と一蹴した。「我々が目指すのはオーガニック成長で、そのために必要なのは極めて特定の企業の買収だ」。買収を「アクセンチュアの活力」と表現する同氏。何はともあれ、今年も新たな買収を試みることは確実だろう。
大手飲料ブランド、スナップチャットの広告を停止
ラム酒ブランド「キャプテンモルガン」の広告が未成年者に配信されている −− 英国広告基準協議会からの指摘を受け、英ディアジオは全世界におけるインスタントメッセージングサービス上の広告を停止すると発表した。こうした動きはデジタルメディアプラットフォームというフィルターの効果性と、自己規制の最善策という課題を改めて浮き彫りにするものだ。
より洗練されるコネクテッドカー
家電・技術見本市CESで、トヨタ自動車とアマゾンは「クルマに搭載された人工知能(AI)『アレクサ』が今年デビューする」と発表した。クルマにおけるAI活用はまだ始まったばかりだが、音声アシスタントは道順案内やエンターテインメントといった機能をどんどん進化させていくだろう。サービスイノベーションの最前線を走るイメージを作りたい両社にとって、この協働は明らかな前進だ。搭乗者にリーチする新たな方法を模索する広告主にとっても、大きな潜在性を秘めた動きに違いない。
「ゲイ擁護のアイスクリーム(?)」でユニリーバに非難殺到
一見、ゲイの権利を擁護しているかのようなネーミングの豪州のアイスクリーム・ブランド「ゴールデン・ゲイタイム(Golden Gaytime)」。この商品を巡って、販売されてもいないインドネシアのソーシャルメディア上で人々の怒りが爆発した。同ブランドは昨年、消費者が考案したレインボーのパッケージデザインを発表。これが同性愛を嫌悪することで知られるインドネシアで、SNSを通じて急速に拡散した。ゴールデン・ゲイタイムは1959年に発売され、ゲイコミュニティーとの公けの関わりはない。発売元のユニリーバは直ちに、「弊社はインドネシアの宗教的・文化的価値観を尊重する」という声明を発表。ある観測筋はCampaignに対し、「世界がより密接に結ばれるようになった今、異なる市場で異なる課題を解決することはより難しくなっている」と語った。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)