1. WPP、「広告業界の変容」を嘆く
第3四半期の純売上高が1.1%減少したWPPは目標利益率を減らし、今年の成長がフラットになると発表した。クライアントの行動変化と新たな競合企業の出現が、従来の広告代理店グループにネガティブな結果を招いたという。「2017年は広告業界全体で売上高成長率が鈍化し、広告主はグーグルやフェイスブックといったテクノロジー企業から直接買付けをするケースが増えた」と株主に説明。だが、「マーケティング分野における経営コンサルタントの台頭は騒がれ過ぎている」というコメントは意外ではないだろう。代わりに、「従来型の経営コンサルタントがマーケティングサービスにおけるコスト削減を推し進めている」と非難した。
2. フェイスブックは「頭痛の種」
昨年の米大統領選に対するロシアの介入疑惑を巡り、フェイスブックとグーグル、ツイッターの法律顧問が上院の公聴会に出席した。複数の上院議員が3社の寡占状態と持続的成長に警告を発する一方、ある議員は「ルーブルで支払われた政治広告の掲載料金をなぜ受け取ったのか」とフェイスブックを問いただした。ロシアの情報機関によるプロパガンダは2015年から17年にかけて1億2600万人の米国人にリーチしたが、フェイスブックはいまだに過失を認めていない。これらのプラットフォームの広告枠を誰が買っているのか、今後より詳しい調査が行われるだろうが、どのようにそれを実行するかは依然明らかではない。フェイスブックは来年末までに安全性とセキュリティーに携わるスタッフを2万人に倍増する計画を発表した。それとは別に、適切な広告提供のためユーザーの会話をチェックするという提案は拒否している。
3. 欧州の新法制が大手テクノロジー企業を悩ます
欧州議会は、データのシェアに同意しなければウェブサイトの閲覧を拒否する“クッキーウォール”の禁止などを含む新たなプライバシー保護法を採択した。欧州はテクノロジー企業に対する規制やプライバシーの保護に関して、米国やアジアの大多数の国々よりも厳しい姿勢をとる。この動きは、ユーザーのデータに基づいた広告モデルを活用するグーグルやフェイスブックに新たな課題をもたらすことになろう。
4. 従来型メディア、フェイクニュースから恩恵
英・市場調査のカンター(Kantar)が米英仏及びブラジルで8千人を対象に行った調査によると、「紙版のニュース雑誌を信頼する」と答えた人々が72%にも上った。ソーシャルメディア上のニュースを信頼すると答えたのは、わずか33%。58%の人は、「1年前に比べソーシャルメディアを信用していない」と回答した。トランプ氏が大統領に選ばれてから「フェイクニュース」の渦中にある米国では、支持率が最も増えたメディアはラジオニュース(「1年前よりも信用している」と回答した人は24%)で、ニュース雑誌がそれに続いた(同じく23%)。
5. ソニーが復活、広告費は削減
ソニーの業績は過去10年で最高となり、年間の営業利益予想が6300億円になると発表した。成長の最大要因となったのはプレイステーションで、保険、マイクロチップ、そしてエンタテインメントがそれに続く。楽観的機運は高まっており、同社はロボット犬「aibo(アイボ)」まで再興。かつて一世を風靡したアイコン的ブランドが、その地位を取り戻す大きなチャンスを得たことは素晴らしい。その一方で、業績好転に広告が果たした役割は定かではない。統計調査会社スタティスタによると、過去4年の広告費は着実に減少しており、2014年に約4740億円だったのが、今年は3630億円にまで下がっている。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)