Ryoko Tasaki
2023年10月27日

世界マーケティング短信:WPP、中国で拘束された幹部を解雇

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:WPP、中国で拘束された幹部を解雇

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

グループエム幹部、贈収賄容疑で拘束

WPP傘下であるグループエム・チャイナの上海事務所が中国当局の家宅捜索を受け、幹部など3名が贈収賄の容疑で拘束された。WPPは声明で、最高投資責任者、データセンター責任者、ゼネラルマネージャーの3名を解雇したことを明らかにしている。

CEO兼中国担当マネージングディレクターのパトリック・シュー氏も取り調べを受けたが、拘束はされていない。同社は独立した第三者機関と共に社内調査を行い、捜査対象となった外部組織との取引を停止している。

中国では外資系企業を対象とした捜索や逮捕が相次いでいる。今年3月にミンツ・グループの北京事務所、4月にはベイン・アンド・カンパニーの上海事務所、5月にはキャップビジョンが家宅捜索を受けた。またアステラス製薬の中国法人幹部の日本人がスパイ容疑で3月に拘束され、今月中旬に正式に逮捕されている。

広告事業が好調なグーグル、クラウドの成長は鈍化

グーグルの親会社であるアルファベット社の第3四半期(7~9月期)の業績発表によると、全体の純利益は197億米ドル(前年同期比42%増)で、二桁成長となった。

広告事業全体は596億米ドル(同9.5%増)、その約13%を占めるユーチューブ広告は80億米ドル(同12.5%増)と好調だった。スンダー・ピチャイCEOによると、ショート動画の1日あたりの視聴回数は700億回を超えているという。また、ユーチューブのサブスクリプション登録者が増えたことで、グーグル事業の「その他」部門は84億米ドル(同21%増)となった。

一方でクラウド事業の売上高は84億米ドル(同22.5%増)で、アナリストの予想を下回る結果に。この結果を受け、同社の株価は時間外取引で約6%も下落した。

広告大手の業績発表 アナリストの予想を上回る企業も

広告大手も、第3四半期の業績を発表している。オムニコムの収益は全体で35.8億米ドル、前年同期比3.3%増とアナリストの予想を上回る結果となった。特に広告&メディア(同6.1%増)、プレシジョンマーケティング(同4.3%増)、ヘルスケア(同3.8%増)、エクスペリエンシャル(同9.2%増)の各分野で大きく成長している。一方、フライシュマン・ヒラードやケッチャムなどを含むPR部門は3.92億米ドル(同5.5%減)、コマース&ブランディング部門も2.12億米ドル(同1.7%減)となった。

ピュブリシスも予想を上回り、純収益は32.4億ユーロ(同5.3%増)と大きく伸びた。年内には6%まで成長すると予想される。メディア部門と、データ部門のイプシロンが好調。一方でクリエイティブの成長率は一桁台に留まったが、これは同社が「従来型広告」と呼ぶ事業を削減しているためだ。

インターパブリックは、純収益が同0.4%減と不調だ。テクノロジー業界や通信業界のクライアントの広告費減少と、デジタルに特化したエージェンシー(R/GA、ヒュージ)の業績不振が影響した。ヘルスケア部門の成長も予想に届かなかったと、フィリップ・クラコウスキーCEOは語る。メディア事業の業績は引き続き良かったものの、いくつかの構造改革が必要だという。一部の新規事業が、上向きになるのに予想よりも時間を要しているとも述べた。

ハヴァスは、全体の純収益が同4.5%増となった。中南米市場が大幅な成長(同51.1%増)を遂げるなど、広告大手の中ではピュブリシスに次ぐ「最高レベル」の成長だと、ヤニック・ボロレCEOはCampaignにコメント。「特にマクロ経済環境が良くないということを考慮すると、この結果には非常に満足しています」。

大人の語りかけで子どもの性的虐待を防ぐ 豪政府キャンペーン

豪州政府が、子どもへの性的虐待の防止キャンペーンを全国展開している。動画内では大人が子どもに、不快にさせるような言動や身体への接触、写真の要求は不適切であることを説明し、もし困っていることがあれば相談してほしいと語る。子どもとの会話には虐待を防ぐ力があると、大人たちに向けて訴求する内容になっている。企画・制作はエネロ・グループ(Enero Group)のエージェンシー、BMF。

「児童性的虐待は、話すことはおろか向き合うことも難しいテーマ」と話すのは、BMFの最高戦略責任者であるクリスティーナ・アヴェンティ氏。「この問題を子どもたちにどのように切り出してよいか分からず、私たちは口を閉ざしてしまいう可能性があります。しかしこの沈黙によって子どもたちと、子どもたちを守る大人との隙間に虐待する人が入り込み、児童性的虐待が起こり得ます。会話はその壁を破り、隙間を支援で満たし、加害者から力を奪い、子どもたちの性的虐待を防ぐのに役立つのです」。

【お知らせ】

生成AIが急速に広がり、マーケティング・コミュニケーションのあり方も大きく変化しています。このたびCampaign Asia-Pacificとフォレスター(Forrester)は、アジア太平洋地域においてAIがどのようにマーケティングに活用されているか、そして将来的にどのように取り入れていくかを調べるアンケート調査を行います。

中堅以上のマーケターやエージェンシーの方々を対象に、10分ほどのアンケートをお願いしています。ぜひご協力のほど、お願いいたします。

詳しくはこちら(英語)から。

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

2 日前

世界マーケティング短信:米司法省がグーグルにChrome売却などを要求

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

3 日前

トランプ再選 テック業界への影響

トランプ新大統領はどのような政策を打ち出すのか。テック企業や広告業界、アジア太平洋地域への影響を考える。

3 日前

誰も教えてくれない、若手クリエイターの人生

競争の激しいエージェンシーの若手クリエイターとして働く著者はこの匿名記事で、ハードワークと挫折、厳しい教訓に満ちた1年を赤裸々に記す。

2024年11月15日

世界マーケティング短信:化石燃料企業との取引がリスクに

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。