Ryoko Tasaki
3 日前

世界マーケティング短信:Xが広告大手に圧力か

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

写真:Shutterstock
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※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

政権での影響力を利用、オムニコムとの合併計画が交渉材料に

イーロン・マスク氏の率いるX(旧ツイッター)が、インターパブリック・グループ(Interpublic Group)に広告支出を増やすよう圧力をかけていたと、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。

報道によると、昨年12月にインターパブリックの担当者Xの弁護士から連絡を受け、同社の顧客である大手広告主はXでの広告支出を増やす必要があると言われたそしてマスク氏がトランプ政権で強い影響力を持つことから、同社が昨年12月に発表したオムニコム(Omnicom)との合併遅らせられたり、妨害される可能性を弁護士から示唆されたという。XのリンダヤッカリーノCEOもインターパブリックの幹部に対し、同様の警告と思われる発言をしたとのことだ。

インターパブリックの広報担当者はCampaignへの電子メールで「私たちの役割は、最も戦略的なメディア投資をクライアントに推奨することです。客観的な推奨は、ブランドとオーディエンスのビジネス成果を最大化します」とコメントした。「当社はさまざまなメディアパートナーと継続的に連携し、マーケターに最大の価値効率性を提供できると考えています。当社がクライアントに代わってパートナーやプラットフォームへの支出を約束することは無く、意思決定の権限は常にクライアントにあります」。

WSJはまた、ヤッカリーノ氏とXの幹部が今年1月に開催されたCES(デジタル技術見本市)で、オムニコム、電通、WPPなどの幹部にも会ったと報じている。WPPとの話し合いではヤッカリーノ氏が年間契約の締結を迫り、過去の水準を上回る支出も求めたという。

Xは2022年10月マスク氏が買収して以来、広告主との間で対立が続いてきた。2023年11にはイベントに登壇したマスク氏が、Xへの広告出稿取りやめについて「お金で私を脅迫しようというのか? くたばってしまえ」と発言した

2024年8月には世界広告主連盟(WFA)や広告主企業が示し合わせて広告出稿を取りやめ、反トラスト法に違反したとテキサス州連邦地裁に提訴この直後に、WFAが運営する「責任あるメディアのための世界同盟(GARM)」は活動を停止している。また今年に入ってから同社は提訴相手を増やしている

日本の広告費、3年連続で過去最高を更新 電通調べ

電通が発表した「2024年 日本の広告費」によると、2024年の総広告費は7兆6,730円(前年比104.9%)と4年連続で成長し、3年連続で過去最高を更新した。好調な企業収益、消費意欲の活発化、世界的なイベント、インバウンド需要の高まりなどに支えられ、「インターネット広告費」「マスコミ四媒体広告費」「プロモーションメディア広告費」の全カテゴリーが成長した。

マスコミ四媒体広告費は2兆3,363億円(同100.9%)で3年ぶりの前年超えとなり、プロモーションメディア広告費は1兆6,850億円(同101.0%)。インターネット広告費は3兆6,517億円(同109.6%)で、総広告費の47.6%を占める。

博報堂DYHと博報堂、役員の異動を発表

トップが交代予定であることを先日発表した博報堂DYホールディングスならびに博報堂が、役員の異動も発表した。

博報堂DYホールディングスの4月1日付の経営体制は、取締役会長が戸田裕一氏(6月に退任予定)、代表取締役社長CCOが水島正幸氏、取締役副社長が矢嶋弘毅氏、取締役副社長CSOが江花昭彦氏、代表取締役が西岡正紀氏(6月に退任予定)。6月の定時株主総会および取締役会・監査役会の後は、代表取締役会長CEO水島氏、代表取締役社長COOに西山泰央氏が就任予定だ

博報堂の経営体制(4月1日付)は代表取締役会長が水島正幸氏、代表取締役社長CCOが名倉健司氏、代表取締役副会長が矢嶋弘毅氏となる。 

アリババ、今後3年間でAIに積極的に投資

中国のアリババ(阿里巴巴集、今後3年間でクラウドコンピューティングとAIに積極的に投資する方針を発表した投資総額は、過去10年間に投資してきた額を上回る規模だという。

呉泳銘(エディ・ウー)CEOは決算発表の場で、「AI技術は大きなチャンスをもたらす」と語った。AIアプリケーション、研究開発、計算能力への投資を増やすことで、AIを事業全体に積極的に統合し、新たな成長機会をつかむという。

デュオリンゴ、キャラクター「死亡」の投稿が話題に

語学学習アプリ「デュオリンゴ(Duolingo)」が2月12日、突如としてフクロウのマスコットであるデュオが「死亡した」とSNSに投稿した。 

「当局が死因を調査中で、我々も全面的に協力中」だが、「おそらくあなたがレッスンを受けるのを待ちわびて亡くなったのでしょう」とのこと。そして「多くの敵がいたことは承知しているが、嫌う理由をコメント欄に書き込むのはやめてほしい」、どうしてもそうしたい場合には「クレジットカードの番号も記載してくれれば、彼をしのんで有料版に登録します」とも。この投稿が注目を集め、いいねが215万件もついた。 

そしてメキシコ料理のチェーン店「エルポヨロコ(El Pollo Loco)」が「私たちではありません。当店ではフクロウは提供していません」とコメントし、アドビ(Adobe)は「イラストレーター(グラフィックデザインツール)の中で翼を与えましょう」、浄水器のブリタ(Brita)は「涙も濾過できればいいのに」(ブリタ)とコメントするなど、さまざまなブランドの公式アカウントが反応した。 

翌日には、サイバートラックに衝突されたことが死因だったと発表。するとXが「全ての鳥は天国へ」と画像を投稿した。ネットフリックス(Netflix)はイカゲームを彷彿とさせる内容で「デュオは排除されました」、同じくフクロウのキャラクターを持つフートスイート(HootSuite「厄介者がいなくなってよかった」と揶揄した一方で、世界保健機関(WHO)は「一つだけ確かなことは、天然痘ではないということ。この病気は1980年に根絶したからです」と書き込んだ。 

さらに14日には、同社の他のキャラクターが死亡した理由についても言及15日にはこれらのキャラクターが棺に納められたぬいぐるみを販売た。ルイス・フォン・アーンCEOは「デュオの地球上での活躍は終わりました」との声明を動画で発表し、「彼に敬意を表して、彼が望んでいたことをしましょう。アプリを開いてレッスンを受け、最高の思い出をシェアしましょう」と呼び掛けた。 

だが18日には、XP(レッスン完了時にもらえる経験値ポイント)を500億点集めてデュオを生き返らせようという特設サイトが立ち上がる。そして24日になると「伝説は不滅」というフレーズと共に、サイバートラックの荷台に載せられた棺からデュオが起き上がる動画を公開続いて「死を偽ったのはテストで、皆さん合格しましたね」と明かした。

一連の投稿に対し、「ソーシャルメディアで注目を集めた素晴らしい施策」と称賛する声上がった一方で、そもそもキャラクターを死なせた理由は何か、なぜ日本の公式アカウントでは「日本にいる僕は生きてるよ!」と違った展開だったのかと戸惑うコメントも見られた。 

(文:田崎亮子)

 

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