David Blecken
2019年5月31日

世界マーケティング通信:GDPR施行から1年、効果はいまだ不透明

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

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※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

GDPRは「骨抜き」か?

消費者のプライバシーを守るため、欧州連合(EU)がGDPR(一般データ保護規則)を施行してから1年以上が経った。企業は違反した場合、最大で全世界年間売上高の4%の制裁金を課せられるが、既にグーグルは5000万ユーロ(約62億円)の支払いを命じられ、フェイスブック(FB)とそのサブブランドも現在厳格な調査の対象となっている(当局が現在行っている調査の半分以上が同社に関するもの)。だが、「複占」を謳歌するこれら企業にとって制裁金は「大海の一滴」にすぎず、どこまで効果があるかは定かでない。アジア太平洋地域ではまだ多くの企業がGDPRを真剣に受け止めておらず、データポリシーを変えずに「高みの見物」を決め込んでいる。デジタルマーケティング情報誌「デジデイ(DIGIDAY)」によれば、英国でGDPRに真摯に対応した企業は対応していない企業に比べて収益が減ったという。傍観する企業は再び自主規制を緩め、様子見の姿勢を取っている有り様だ。

それでもGDPRは企業のビジネスに大きな変革をもたらすだろう。本当に効果を発揮するのは、全ての企業が真摯に捉え、足並みを揃えた時だ。

「ブランドはムスリム女性にもっと関心を」 

ナイキにとって初の「ヒジャブ着用モデル」となったエジプトのトライアスロン選手、マナル・ロストム氏がロンドンのカンファレンスで講演し、「もっと多くの広告主がナイキをみならい、ムスリム女性への偏見を取り除くよう努力すべきだ」と述べた。同氏は2014年、ナイキの広告が「ムスリム女性を除外している」と批判。その後、同社のモデルに起用された。ナイキは2017年にムスリムのアスリートのために「プロヒジャブ」を発売。ロストム氏は「コミュニケーションが徐々に多様化しているブランド」としてアディダス、アップル、ギャップ、H&Mを挙げたが、「より多くのブランドがこれに加わる必要がある」とコメント。「ヒジャブを付けていて、街で振り返られるのはもうたくさん。世界中の偏見を変えるために、まだまだやらなければならないことがある」とも。だが、少なくともビジネス上のインセンティブがあることは確かだ。トムソン・ロイター社の調査によれば、2021年までにムスリムは洋服に3680億米ドル、化粧品に2130億ドルを消費するという。

経済価値で見る、スポーツチームの世界ランキング

調査会社ユーロモニター(Euromonitor)が発表した経済的価値から見るプロスポーツチームの魅力度ランキングは、1位にレアル・マドリッド、2位マンチェスター・ユナイテッド、3位FCバルセロナ、以下バイエルン・ミュンヘン、アーセナルと欧州のサッカークラブ勢が独占した。指標となったのは各クラブのレガシーやファンに提供するエクスペリエンス、資産価値、ファン層など。同社は地域毎のランキングも発表し、アジア太平洋地域で首位となったのは読売ジャイアンツ。北米はニューヨーク・ヤンキース、中南米はアルゼンチンのボカ・ジュニアーズ(サッカー)、そして中東・アフリカでは南アフリカのラグビーチーム、ウェスタン・プロヴィンスだった。

行動ターゲティングは効果なし?

クッキー(cookies)に関する論議は今週も続いた。カーネギーメロン大、ミネソタ大、カリフォルニア大アーバイン校のリサーチャーが手がけた学術調査によると、クッキーを介したインプレッションの収益は、介さなかったものを4%上回っただけだった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙がその結果を報じた。調査は1週間にわたる何百万というトランザクションに基づくもの。同紙は、「マーケターは行動ターゲティング広告にほぼ3倍の費用を支払っているが、その大半は時に『アドテック税』と揶揄されるブラックホールに消えていく」と指摘。こうした調査は別にしても、消費者はマーケターが思うほど「オーダーメイド」の広告を歓迎していないことはほぼ明らかだ。行動データに基づいた広告を受け取った者は、誰もが「イライラする」「ゾッとする」という感想を持つだろうから。

その他の今週の動き:

BMW傘下の自動車メーカー、ミニが協働する単一の広告代理店を探している。世界キャンペーンのピッチが喫緊の課題だ。

電通が、日中間の国境を超えたマーケティングサービスを提供するグループ横断組織「Dentsu China Xover Center(CXC、電通シー・バイ・シー)」を発足させた。

人気のソーシャルプラットフォーム「TikTok」を運営するバイトダンス(Bytedance)が、「教育を目的としたハードウェア」の開発を進めている

あなたは、「燃え尽き症候群」や会社による搾取を経験したことがありますか? もしそうならば、是非ご意見をお聞かせください。いただいたお便りが実名入りで公開されることは決してなく、プライバシーは厳守されます。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

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