昨今、ソーシャルプラットフォーム上でますます目にするようになった「#ad」「#spon」といったハッシュタグ。あるいは料理やエクササイズのライブ動画を配信したり、さりげなく製品紹介をしたりするブランドアンバサダー。インフルエンサーマーケティングは急激に拡大し、ブランドは2022年までに150億米ドル(約1兆6500億円)を費やす見込みだという(経済専門サイト『ビジネスインサイダー』調べ)。
支出の増加にもかかわらず、ブランドやエージェンシーはインフルエンサーを使ったキャンペーンの正確な効果をいまだに測りかねている。それは、第三者による透明性の高い測定基準がないからだ。ソーシャルプラットフォームは「いいね!」「ページビュー数」「シェア」といったこれまでのエンゲージメントの基準を見直しつつあり、より正確なROI(投資利益率)の把握は特に重要な課題となっている。客観性の高い新たな基準が普及すれば、インフルエンサーやそのエージェンシーはコンテンツの「価値」を証明するのに四苦八苦するのではないか。
たとえそれが論点でなくても、現在エージェンシーやブランドが使っているインフルエンサーの効果測定基準は目的にかなったものではない。我々は何が機能し、機能しないかをもっと正しく理解する必要があるのだ。インフルエンサーは極めてエンゲージメントの高いオーディエンスと密なコミュニティーを持ち、強い信頼を得ている。ブランドはどうしたらそれを最大限活用し、真に効果的なキャンペーンを展開できるのだろうか。
正しい測定と真の効果
私が所属するデータ情報会社ニールセンはこの課題に取り組み、インフルエンサーの担っている役割をより明確化するため、英国で「インフルエンサー・ブランド・エフェクト」という効果測定ツールを立ち上げた。これはインフルエンサーのフォロワーから情報を集め、ブランドが採用する測定基準にキャンペーン効果がどれだけ反映されているかを調べるものだ。
初期段階の運用で分かったのは、インフルエンサーを使ったキャンペーンは従来のデジタルコンテンツによるキャンペーンより4倍も強いインパクトをフォロワーに与えていることだった。実に高いレベルのエンゲージメントを生んでいるのだ。
マーケティング効果を幅広く理解するためブランドが使う様々な測定基準も、インフルエンサーの効果を顕著に表しているというポジティブな結果が出た。認知度や好感度、そして購入につながる検討(consideration)といった主な基準で、いずれも従来のデジタル・動画キャンペーンより高い数字を示したのだ(それぞれ平均して12%、15%、17%高かった)。
インフルエンサーマーケティングとは「人」の活用であり、現代における口コミにほかならない。我々は親しみを感じる人間を信頼し、そのメッセージに敏感に反応するということだろう。
コンテンツ利用の最大化
昨今、より多くのエージェンシーがインフルエンサーをコンテンツクリエイターとみなすようになったが、質の高いコンテンツとはどのように定義できるのだろう。また、その効果はどう測定できるのか。
予想に反するかもしれないが、ブランドのKPI(重要目標達成指標)を向上させるコンテンツは、他のインフルエンサーのそれと比べてより製品に焦点を当てていることが分かった。特にそれは、マイクロインフルエンサーのコンテンツで顕著だった。
インフルエンサーに自主性を与え、コンテンツを自由に作らせることは重要だ。だが、ターゲットオーディエンスに誤解が生じぬよう、きちんと製品に焦点を当てることは不可欠と言える。例えば飲料品メーカーならば、商品のボトルとブランドがはっきりと視聴者に見えるようにしなければならない。魅力的なルックスの人々がただ商品を飲んでいる、といった写真や動画では不十分なのだ。
鍵は「信頼」
インフルエンサーは、そのコンテンツや感覚を信頼するフォロワーのコミュニティーを持つ。こうしたエンゲージメントの高いオーディエンスはインフルエンサーコンテンツを記憶するだけでなく、それに対し強い信頼と親近感を抱くようだ。従ってブランドはインフルエンサーと協働し、オーディエンスと関係を築くことで、ブランドアソシエーション(連想)と好感度を高めることができる。
言うまでもないが、スポンサードポストは常にタグ付けされていなければならない。インフルエンサーは懸念するが、フォロワーがこうしたコンテンツを敬遠するという証は全くない。
広告界は次世代のインフルエンサーマーケティングに取り組んでいるが、揺るがない要素がいくつかある。それは優れたコンテンツと意義深いパートナーシップ、そして特に重要なのが、確かな測定基準なのだ。
(文:バーニー・ファーマー 翻訳・編集:水野龍哉)
バーニー・ファーマーはニールセンメディアUKのコマーシャルディレクターを務める。