日本の広告主は、オンライン広告の環境に細心の注意を払わねばならない −− インテグラル・アド・サイエンス(IAS)の行った調査でこのような結果が出た。
ブランドリスクやデジタル広告のプレースメント(配信面の場所)効果などをテーマにした同社の「リップルエフェクト(波及効果)」調査で、日本のインターネット利用者の65%は「広告の環境が悪いブランドの利用はやめる」傾向が強いことが分かった。
米国での調査では、同じ回答をした者は62%。意外にも日本の消費者の方がブランド価値に対して敏感であることが分かった。日本ではブランド主導型よりも、戦術型の広告が主流とされる。
日本では80%以上が、「オンライン広告の環境は良質でなければならない」と回答。また90%近くは、環境の悪い広告は「不快に感じる」とし、約70%は「環境の悪さの責任は広告主にある」と答えた。
このIASの調査は9月にオンラインで実施され、日本では501人、世界では4571人が調査対象となった。
「回答者は積極的に意思表示をしてくれた」と話すのはIASのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、トニー・マーロウ氏。「オンライン広告では安全性とともに、適合性を考慮することが広告主にとって重要です」。
「広告を適合させるには、広告主が何を表現したいかを理解し、アイデンティティーを明確にする必要がある」
環境の良し悪しは結局のところ、利用者の感性で決まる。よってその定義は難しい。マーロウ氏も「答えはターゲットオーディエンスの判断次第」と認める。だが「コンテクスト(背景)がそぐわないと感じれば、消費者が不快な気分になる」ことは確か。つまり、ブランド価値に傷をつけることになるのだ。
「消費者は決して、エコシステムに加わっている全てのプレーヤーのことは考えません。広告の環境が悪くても、パブリッシャーの責任とは思わないのです。これは道理にかなったこと。しかしながらマーケターは、消費者のこうした反応をしばしば忘れがちです」
調査は、ニューロマーケティングを専門とするニューロインサイト(Neuro-Insight)社と共同で行われた。その結果、環境で良い印象を与えた広告は消費者の記憶により強く残ることも分かった。「符号化」(記憶の基本的な過程の一つ)を司る脳の機能が、悪い印象を与えた広告よりも30%高くなったのだという。
今回の結果は、どこに露出しても効果的な広告をブランドは作るべき、という考えに疑問を呈する。「この調査で、全体のコンテクストが重要であることが明確になりました」(マーロウ氏)。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)