グローバル化が進んだ今日、ブランドであろうがヒトであろうが、「外国の」という形容詞には以前ほどの付加価値はなくなってきている。だが日本の広告界では依然、「外国人」の活躍の場(その役割は変化しつつあるが……)があるようだ。
電通が最近手がけた、ボルボとUberEats(ウーバーイーツ)のコラボレーションCF。ドレスアップした幾分80年代風の白人カップルが、高級SUV車の後部座席でフルコースの食事を楽しむ様子が描かれる。日本人向けの広告なのに、なぜ日本人を起用しないのだろうか。
電通広報部によれば、「日常からかけ離れた『特別なひととき』を演出したかったので、西洋人モデルを起用しました」。
今の時代は、こうしたテーマもオープンな議論の対象となる。CFで起用されるのは日本人と外国人のどちらが良いか、一般消費者がどのように受け止めているかといった調査結果はほとんどない。電通や博報堂、ADKといった日本を代表する広告代理店も、外国人タレントを起用するのはほぼ直観的な理由からで、客観的データに基づいているわけではないようだ。
電通でクリエイティブディレクターを務める平石洋介氏は、「それはどんなメッセージを発信し、何を消費者に認識してほしいかによるでしょう。場合によっては、今でも外国人の方が宣伝効果を高めることがあります」と語る。とは言いつつ、最近は外国人を起用する目新しさは以前ほどない、とも。
「今ではハリウッドスターですら、なぜ登場するのかという理由付けが求められます。単なる憧れとしてではなく、一定の役割を演じることが求められているのです」と同氏。その例として、缶コーヒー「ボス」のCFで長きにわたりエイリアンを演じるトミー・リー・ジョーンズや、ソフトバンクの最近の高校生向けキャンペーンに登場するジャスティン・ビーバーらを挙げる。これらのCFは既存のストーリーにセレブリティを組み合わせることで、「商品イメージをより浸透させることに成功している」というのだ。
たとえそうであっても、ジャスティン・ビーバーと「嵐」のメンバーをどう使い分けるのか、といった疑問は残る。フラミンゴ東京のシニア・リサーチディレクター、オムリ・レイス氏は「科学的根拠はないでしょうね。『身近さ』の度合いが指標になるのでしょう」と語る。
「化粧品やヘアケア用品のような極めて日常的な商品の場合、消費者は日本人モデルを好みます。外国人モデルを見ても、同じような肌やヘアにはならないと分かっていますから」
それはもっともな話だ。最近ではその「着地点」として、特に美容や化粧品などの分野でハーフモデル(日本人との)が多く登場し、「行き過ぎ」のないように商品をアピールする傾向がある。ボルボとウーバーイーツのキャンペーンのように外国風ライフスタイルや、ある程度グローバルな要素をアピールしたい場合は、消費者の関心をより喚起するために外国人モデルを起用することになるのだろう。
グローバリゼーションの時代ではあっても、「日本人は今も自分たちの生活習慣は外国人と明らかに違う、と考えています」とレイス氏。「ですから、人々の暮らしに密着した商品の広告に外国人を起用することは得策ではないでしょう」。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉)