今週、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班のメンバーらが、電通の東京本社と全国3支社に強制捜査に入った。前回の立ち入り調査に続くもので、昨年12月に起きた新入社員の過労自殺の経緯などをさらに詳しく調べ上げる。
最初の立ち入り調査が行われたのは10月半ば。報道によれば、今回は90人近くを動員した異例の規模で、東京本社のほか大阪や名古屋、京都の各支社を捜査。労使で決めた時間外労働の上限を超えて複数の社員が働かされていた実態が明るみに出たことを受け、前回同様に抜き打ちで行われた。当局は電通に対し、長時間労働の常態化を容認、推奨してきた労働基準法違反の疑いをかけている。
電通は先頃新たな就業規則を発表し、月間所定外労働時間の上限の70時間から65時間への引き下げ、夜10時以降の業務原則禁止と全館消灯に着手した。ちなみに同社の所定労働時間は、労働基準法で定める上限の8時間より1時間短い7時間だ。
これらの対応はしかるべき方向に舵を切っているとも言えるが、残業時間の5時間縮小では不十分だという声もある。また全館10時消灯とする一方、朝は5時から照明をつけられることになっており、厳重な監視体制でも敷かぬ限り、これまで同様極端な長時間労働を続けることは理論上可能だ。
いずれにせよ、電通には一層の改革が求められる。先週は「電通労働環境改革本部」を設置、第三者の専門家や若手社員、中間管理職の意見を取り入れて労働環境を向上させていくと発表している。
今回の件について電通は、捜査が進行中のためコメントできないとしている。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:水野龍哉)