DANは2020年より「イージス」を社名から外すことを計画。また「One Dentsu」戦略を完遂するため、APAC地域のオペレーションのさらなるスリム化も進めていることをCampaignは突き止めた。
電通は2020年1月1日付で「株式会社電通グループ」に商号を変更することが既に発表されている。DANは子会社ではなく電通本体と並ぶこととなり、イージスという名前も使わなくなる旨が社員に伝えたとされる。
DANのティム・アンドレーCEOはCampaignの直近のインタビューでリブランディングについては確言しなかったが、同社が大きな転機に立っていることを明らかにした。「『電通ネットワークとイージスメディア』の買収や統合は完了した」と同氏は語る。
さらに電通のスポークスパーソンは、「我々が現在フォーカスしているのは社名ではなく、DANと電通の事業をより密接に結びつけること。これは我々が共有する顧客中心主義、イノベーション、クリエイティビティーへの情熱によって、持続可能な成長を長期的にもたらすための、自然な進化といえます」と付け加えた。
電通は2012年に英広告大手イージス・グループを約31.6ポンド(約3955億円)で買収し、イージスの名称を継承した。だが電通は国内事業と海外事業を「One Dentsu」として一体化していきたい意向で、イージスのブランディング、そしてDANのスタッフたちは追い払われた形だ。
影響を受けるのは誰か
DANはリストラの一環で今年1月、APAC担当CEOの役職を解いたことを発表。Campaignが把握するところによると、先週もシンガポールオフィスでチーフ、バイスプレジデント、ヘッドなどを含むシニアマネジメント層やミドルマネジメント層が、少なくとも8名解雇された。
情報筋によると、DANを去るのはダンカン・ポインター氏(元ビジウムAPAC代表)、ソナル・パテル氏(プログラマティックサービスのAPACプレジデント)、アーヴィンド・セスマダバン氏(APACチーフ・ストラテジー&イノベーション・オフィサー)など。解雇された者も、自ら退職を選んだ者もいた他、DANは一部の社員のために別の活躍の場も探しているようだ。
これらの社員が実際にどのような影響を受けるのか、コメントを求めたが電通側は明言を避けた。
「我々は先週、シンガポールにおいて改組を行いました。社員への影響を鑑み、今回の改組についてこれ以上のコメントはできません」とDANのスポークスパーソンは語る。
「APAC内の市場が、変わりゆくクライアントのニーズに迅速かつ敏捷に応えていけるよう、同地域のマネジメント構造を変えることを3月に発表しました。広告界において複雑化と細分化がますます進む中、我々は顧客に価値を提供しながら、当社の事業を長期的かつ持続的に成長させていく。いかにシンプルにできるかに注力する必要があります」
複数の情報筋によると、先日の解雇はまだリストラの最終ラウンドではないようだ。
これはAPACにおけるDANのメディア事業の再構築の一環であり、メディアエージェンシーはシンガポールで、3つの主要なワーキンググループ(ブランド・ソリューション・グループ、ワン・シンガポール・メディア・グループ、クライアント・ソリューション・グループ)に統合されることとなる。
成長する地域に再び注目
財政面では、昨年はAPAC地域にとって苦しい一年であった。電通グループの2018年度の決算発表によると、欧州・中東及びアフリカ(EMEA)地域が最も大きな成長を遂げた一方で、APAC(日本を除く)は中国と豪州での苦戦が影響し、オーガニック成長率は2018年で1.7%減、第4四半期で9.6%減であった。
一部地域では人員削減を進める同社だが、これが他地域での企業買収の推進力になっている。同社は今月に入ってからインドのデータ分析会社「ウガム社」、ニュージーランドのデジタルテクノロジー関連のコンサルティング会社「ダバンティ社」、デジタルエージェンシー「アンビエント・デジタル・ベトナム社」の買収を発表している。
R3社のM&Aランキングによると、2019年の第1四半期に最も活発に買収を行ったのは電通であった。同社はこの期間、ハッピーマーケター、BJL、フィルター、コミュニカ+A、レダーアドバタイジングの5社を買収。R3社によれば、その総額は2億4700万米ドル(約270億円)に上るという。
(文:ジェシカ・グッドフェロー 翻訳・編集:田崎亮子)