ネットフリックス、日本独自のキャンペーン
昨年9月、初のグローバルブランドキャンペーン「We’re only one story away(ひとりじゃない、世界がある。)」をスタートさせたネットフリックス。この年末年始には、その第2弾として日本独自のキャンペーンを行った。以下が12月20日から大晦日まで放映されたTVCM『再生のはじまり』と、元旦から3日にかけて放映されたTVCM『想像と再生』だ。
表題の「再生」という言葉には、エンターテインメント(ネットフリックスが提供する映像作品)の再生と世界の再生という2つの意味を込めた。『想像と再生』では、オリジナル作品の舞台裏にフォーカス。世界のクリエイターとともに『今際の国のアリス』『日本沈没2020』といった話題の作品を紹介。表現したのは、2021年も「人々の背中を押し、想像力を刺激する映像作品を生み出し続けていく」ブランドの信念だ。
TVCM以外でも、大晦日と元日には主要紙に大々的な広告を掲載。東京・大阪・名古屋・福岡の主要都市ではOOH(屋外広告、山手線トレインジャックやボード表示など)を展開した。
Campaign、「グローバル・インテリジェンス・ツール」を発表
Campaignは、世界の主要広告・メディアエージェンシーのビジネスパフォーマンスがひと目でわかるツール「Campaign Advertising Intelligence」を発表した。データ主導の分析で、世界1000社以上のエージェンシーを包括する。Campaignにとっては初となるグローバルプロダクトだ。
評価に使われるデータは、大小の広告賞やクライアントの獲得実績、部門別の市場シェアなど。さらには、広告費が多い世界2000社以上のブランドも多様なデータで分析、各社の広告支出の傾向を解き明かす。
「Campaign AIはビジネスに不可欠な大量の情報と、エージェンシーのパフォーマンスに関する客観的なインサイトを提供するツール。現在の広告・マーケティング業界は新たな企業が多数参入し、競争が激化、デジタル化も加速しています。こうした大きな変化の時代にあって、AIは進化と成功を導く新たなベンチマークとなるでしょう」(Campaign UK編集長、ギデオン・スパニエ)
Campaign AIのデータに基づくリポートはこちらから。
Campaign AIはコーポレートライセンスにより入手可能です。お問い合わせは弊社コマーシャルディレクター(ペイドコンテンツ担当)[email protected] までお願い致します。
アクセンチュア インタラクティブ、再び増収に
アクセンチュア インタラクティブは、2020年9−11月期に「1桁台の増収に転じた」と発表した。コロナ禍の影響で、それまでの2四半期は「1桁台の減収」。具体的な数字は未公表だった。世界最大級のコンサルティング会社アクセンチュアのデジタルサービスを担う同社は、ドロガ5、フィヨルド、カルマラマ、ザ・モンキーズといったエージェンシーを所有する。
「コロナ禍による我が社への影響は甚大でした。旅行・小売業界などが深刻な打撃を受け、我が社のクライアントも新たなエクスペリエンスに取り組むどころではなくなり、事業の立て直しに懸命だった。再び増収に転じたのは、クライアントが新たな環境の中でエクスペリエンスの創造を模索し、デジタル変革に注力したからです」。アクセンチュアのジュリー・スウィートCEOは収支報告の席上、このように語った。
アクセンチュア インタラクティブは2019年度に「2桁の増収を達成し、売上高は100億米ドル以上だった」と発表。これは世界第4位の広告エージェンシーグループ、インターパブリックの売上規模に匹敵する。
「クライアントは我々に対し、1つのサービスではなく幅広いビジネス成果を期待している。エクスペリエンスはその重要な要素です」とスウィートCEO。アクセンチュア インタラクティブは昨今、デジタル界における広告やマーケティングにとどまらず、あらゆる顧客体験に対応する「指定エクスペリエンスエージェンシー」と自社を定義し直している。
S4キャピタル、米エージェンシー2社を買収
S4キャピタルは4日、傘下のプログラマティックエージェンシーであるマイティハイブ(Mighty Hive)が米パフォーマンスエージェンシーのメトリックセオリー(Metric Theory)を、コンテンツエージェンシーのメディアモンクス(Media Monks)が総合エージェンシーのディコーディド(Decoded)をそれぞれ吸収合併すると発表した。
メトリックセオリーは全米各地に130人の従業員を抱え、合併によってマイティハイブの会社規模は1.5倍となる。「マイティハイブはこの1年半の間プログラマティックに注力し、データと分析に関する能力を飛躍的に高めた。パフォーマンスは業界の成長分野であり、この機能が加わることでより幅広いサービスが提供できる」とS4キャピタルのエグゼクティブチェアマン、マーティン・ソレル氏は語る。
ディコーディドはクリエイティブ、テクノロジー、メディア分野をカバーする総合エージェンシーで、ニューヨークとロサンジェルスのオフィスに200人の従業員が所属。Tモバイル、VISA、SCジョンソンといったクライアントを持つ。
「どのような形であれ、従来型メディアに進出する意図は今のところ全くない」とソレル氏。
メトリックセオリー、ディコーディドのブランド名は暫定的に残るが、ゆくゆくはマイティハイブとメディアモンクスに統一される予定。S4キャピタルの事業の3分の2はメディアモンクスのコンテンツ事業が担っており、残りの3分の1をマイティハイブのデータ、メディア、アナリティクス事業が担う。グループ全体の従業員は約4000名となり、昨年末より約20%の増加となる。
電通、APACメディア新CEOにメロトラ氏
電通インターナショナルはAPAC(アジア太平洋地域)のメディア担当CEOに、プレナ・メロトラ氏を任命した。現職であるシンガポールにあるメディアグループのマネージングディレクターも引き続き兼務する。
「今後メロトラ氏は、APACにおけるメディア戦略開発と展開、クライアントメディアの効率性や適性、パフォーマンス最大化のツール及び能力の向上を牽引していく」(同社スポークスパーソン)
メロトラ氏は2016年にカラ(Carat)の投資部門責任者となり、間もなくチーフクライアントオフィサーに。これまでアイプロスペクト、ビジウム(Vizeum)、アンプリファイ、アムネット、ポスタースコープといったブランドを管轄した。
従業員過労死で、ピンデュオデュオに逆風
急成長を遂げる中国のeコマース企業ピンデュオデュオが、強い批判にさらされている。事の発端は、12月29日に起きた女性従業員の突然死。この日、午前1時半に仕事を終えた彼女は帰宅途中に突然倒れ、そのまま帰らぬ人となった。まだ20代前半の若さだったという。
彼女の死で、ソーシャルメディア上では同社への大きな非難が巻き起こった。槍玉にあがったのはその劣悪な労働慣行と、中国のテック業界が長時間労働を正当化している姿勢だ。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、ピンデュオデュオの過酷な労働環境は以前からよく知られており、従業員たちの証言から「996」と言われるノルマがあったという。すなわち、朝9時から夜9時まで週に6日間働くというものだ。この慣行はテック業界の文化となり、中国ミレニアル世代の燃え尽き症候群にもつながっているという。
4日には同社のソーシャルメディアアカウントに、女性従業員の死が「起こるべくして起きた」と主張するような投稿が掲載された。曰く、「社会の底辺で生活する人たちを見てみよ。生活のために命を賭けない者などいるだろうか? 我々は、命を賭して闘う時代を生きているのだ」。この投稿は一気に拡散したが、間もなく削除された。
また北京青年報によると、こうした動きを受けて上海市長寧区安全生産監督管理局が同社の捜査に乗り出し、労働環境や雇用契約を調べ始めたという。Campaign Asia-Pacificには同社から声明が送られてきたが、亡くなった女性とその家族を悼む月並みな内容で、労働慣行やソーシャルメディア上での批判に関する言及はなかった。
中国のテック業界では、アリババの創業者ジャック・マー氏やJDドットコムのCEOリチャード・リュー氏ら重鎮が、「996」文化を公式に認める発言をしている。曰く、「競争の激しい社会では生き残るために必要な慣行」。マー氏は2019年に開かれたインターネット関連のイベントの席上で、「個人的には大賛成。より多く働き、努力することをせずにどうやって望む成功を手に入れられるだろう」と述べている。
(文:水野龍哉)