新型コロナウイルスの感染拡大でトイレットペーパーが不足するという誤情報が広がり、全国の店頭では買い占め騒動が起こった。買えないと思うと消費者は、余計に不安になるのだろう。スーパーマーケットやドラッグストアの前には朝から長蛇の列ができ、トイレットペーパーやペーパータオル、紙おむつ、生理用品など商品棚から消えた。これらの商品がオークションサイトにて高値で転売されていることも、大きな問題となった。
そんな中、イオンの店頭に大量のトイレットペーパーが壁のように積み上げられた衝撃的な写真がSNSに続々と投稿され、シェアされていった。しかも、通常ならば一人1点までという制限が設けられるところを、「おひとり様10点まで」というPOPを添えた店舗もあったという。
近所のイオンのやる気を感じた!#イオン#トイレットペーパー #トイレットペーパーあります #しかもかなりたくさん#東雲イオン pic.twitter.com/ssakPom8S5
— あけました (@ysl24392317) March 3, 2020
「『今のうちに買っておかないと』という不安な気持ちから生じる消費マインドに対し、特に需要の高い大型店で『絶対に品切れしない量』を陳列することで安心感を与え、通常の消費行動に落ち着けるねらいで実施しています」と、イオンの広報担当者は説明する。
「身近な場所でも手に入る」ということを視覚的に伝えるため、店頭の、客の手が届く場所で大きく積むことがポイントだという。前日から準備し、通常の配送からプラスアルファで、紙製品のみを積み込んだ大型トラック数台を手配し、首都圏の大型店舗に納品した。
店舗によっては一人10点まで購入できるが、これは大量買いによる転売を防ぎつつ、必要としている人には必要なだけ買ってもらえるようにとの配慮だ。在庫が豊富だったことも、同社の大きな強みといえる。
これだけ大量に店頭に並んでいるならば、今急いで買い込む必要はない――。そのように消費者が安心したのか、「想定よりも早く、落ち着いた購買行動に戻っていただけたという実感があります」と広報担当者は語る。
SNSにも、イオンに対する「やる気を感じた!」「すがすがしい」「かっこいい」といった称賛のコメント、この企画の実現を支えた製紙会社(POPに記載されていたため写真拡散とともに認知度が向上)やトラックドライバーをねぎらうコメント、「本当に無かったので助かった!」という安堵の声が数多く投稿された。
(文:田崎亮子)