David Blecken
2018年2月22日

インフィニティ、2018年の成長の鍵はソーシャルメディアとストーリー

アジアでのブランディングを模索する日産自動車のインフィニティ。ヒューマンなストーリーにブランドのDNAを盛り込んだキャンペーンで、その活路を見出す。

インフィニティ、2018年の成長の鍵はソーシャルメディアとストーリー

インフィニティにとって初となるグローバルブランディングキャンペーン「Beyond Your Numbers」のアジア版が間もなく公開される。加えて、SUV車「QX80」のテレビCM「Thrones(王座、の意)」もオンエアされる予定だ。

今の自動車メーカーの主流のキャンペーンは、クルマにスポットライトを当てず、より大きなテーマをオーディエンスに提示すること。インフィニティのブランド認知度は依然どちらかと言うと低く、そのポジショニングはまだ確立されていない。Thronesは製品の長所をストレートに描いた作品だが、キャンペーンでは人間の成し得る偉業をクルマのイメージに結びつけることをテーマとする。

こうした目標を達成するには意欲的な取り組みが求められるが、インフィニティはまさしく人生に対して意欲的な人々が選ぶクルマだ。グローバルマーケティング責任者のメリッサ・ベル氏はこのように語る。「インスピレーションを与えるようなストーリーを作るには、テクノロジーや性能といった従来的なカテゴリーを超越する必要があります。この作品はまさにそれを具現化したもの。まったく新しいアプローチとは言えませんが、高級車のカテゴリーでインフィニティを『挑戦者』として位置付ける、適切な表現だと考えています」。

「ブランドストーリーを語る上では初めての試み」とも話すが、Thronesはややストーリー性に欠けるとも言える。だが、「人々が成功を共有するイメージを表現している」と同氏。「継続するストーリーの一環です。個人的成功の意味合いは文化的土壌によって変わってきますが、我々はブランドとしてそれを共有する方がより好ましいと提唱しているのです」。

インフィニティにとって米国に次ぐ世界第2位の市場は中国だが、ブランド認知度は「依然極めて低い」。インターブランドが今年発表した日本ブランドの国際的認知度ランキングでは、トヨタ自動車とホンダ、日産と自動車メーカー3社がトップを独占した。ブランド的にインフィニティに最も近いレクサスも11位だったが、インフィニティは40位以内にも入らなかった。

ベル氏は、ブランドを強化するには「より深みのあるストーリーテリングが必須」と語る。今回の作品は個人のストーリーがフィーチュアされているが、「これからはインフィニティそのもののストーリーの、様々な側面を描くことが大事になるでしょう」。

「消費者はまだ、ブランドのDNAの核心部分に関する知識がありません」。インフィニティではこれまで戦略的なコミュニケーションは優先されなかった。「我々が最優先するのは、ドライバーのことを考えたクルマづくりです。しかしそうした方向性は、人間中心の考え方や日本特有のホスピタリティに繋がるものでしょう」。今年は起業家を支援するプログラム「インフィニティ・ラボ」や「インフィニティ・エンジニアリング・アカデミー」といった試みが、ブランドコミュニケーションで主要な役割を果たす予定だ。

メリッサ・ベル氏

「これらのストーリーはまだ消費者に伝わっていません。インフィニティの三日月型のロゴは、地平線に向かう終わりなき道を意味しています。我々の顧客はクルマの購入だけに興味を持っているのではなく、クルマやブランドが掲げる哲学にも共鳴してくれているのです」

確かにそうかもしれないが、もう1つの課題は販売モデルを消費者に的確に伝えることだろう。香港のマーケティング界で働くあるカーマニアによると、インフィニティのラインナップはレクサスやメルセデス、BMWといった他の高級車ブランドに比べるとモデル間で重複する要素が多く、紛らわしいという。だがベル氏によるとその課題は既に取り組みが終わり、「認知度の高まりとともに売上げも伸びています」。

実際、それは事実だ。昨年、インフィニティは世界で24万6492台を売り、2016年に比べると7%増えた。アジアでは中国が最大の市場で、販売数は4万8000台強。だがブランドが今注視するのは台湾で、前年比21%増の2440台だった。

この勢いを保つために、インフィニティはソーシャルメディアに賭ける。「デジタルとソーシャルは我々の主要なコミュニケーションチャンネルになりつつあります」とベル氏。「適切でパーソナルなメッセージを送るため、我が社が保有しているデータを活用したい。我々の顧客は進歩的で個を大切にします。ですから、それに対応できるコミュニケーションをしなければなりません。ソーシャル面は昨年進歩を遂げたので、今年はより一層注力していくつもりです」。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

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Campaign Japan

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