今年のカンヌライオンズでは、アジア太平洋地域(APAC)の国々は締めて113の賞を獲得した。その内訳はグランプリが3、ゴールドが9、シルバーが32、ブロンズが69。国別ではオーストラリアがトップで29。次いでインドが22、日本が14だった。
グランプリを獲得したのは、電通マクギャリーボウエン台湾が手掛けた不動産大手シンイ・リアルティ(Synyi Realty、信義房屋)のショートフィルム「In Love We Trust」と、オグルヴィ・パキスタンによる通信大手テレノール(Telenor)のキャンペーン動画「Naming the Invisible by Digital Birth Registration」の2作品。前者はエンターテインメント部門、後者はメディアとモバイルの2部門で最高賞を獲得した。共に、国内における大きな社会的課題を正面から据えた作品だ。台湾勢のグランプリ受賞はカンヌ史上初。(グランプリの作品はこちらから)
日本勢の最高位は、電通による江崎グリコのキャンペーン「ポッキー・ザ・ギフト」(写真下)。デザイン部門でゴールドを受賞した。日本人に長年親しまれてきたスナック「ポッキー」のパッケージを贈答用に一新、年齢層の高い顧客の獲得に成功した。
次いで、シルバーが2作品。電通とヤマハによる「ディア・グレン」はエンターテインメントの音楽部門で受賞。夭折した伝説的ピアニスト、グレン・グールドの演奏を人工知能(AI)で再現するという取り組みで、現代の名演奏家との共演コンサートも催された。人間とAIとの共創、そして新たな音楽表現を提起するプロジェクトだ。
パンテーン(P&G)のキャンペーン「#HairWeGo〜さあ、この髪でいこう。」はPR部門でシルバーとブロンズを受賞。協働したのは電通、PARTY、マテリアルの3社。テーマは、ヘアスタイルという視点から捉えたダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(包摂性)の促進。均質性を求める「就活ヘア」や、校則となっている「地毛証明書」といった日本社会に根深い排他的な同調圧力へのアンチテーゼだ。
ブロンズを受賞したのは、以下の作品群。
ブランド、エクスペリエンス&アクティベーション部門
- 無印良品 「気持ちいいのはなぜだろう」 制作:日本デザインセンター
デジタルクラフト部門
- 資生堂「唐草」 「The Continuously Changing Brand Identity “Shiseido Karakusa”」 制作:電通、資生堂
- 「Yakushima Treasure」 ライブ配信ムービー「Yakushima Treasure 〜 Another Live from Yakushima」 制作:電通
- 森ビル 「アーバンラボ」 制作協力:SIX
エンターテインメント部門
- SKⅡ 「Center Lane」 制作:グレイ東京
- 全日空 「Game Chronicle 〜 Is Japan cool?」 制作:Enjin
フィルムクラフト部門
- 森ビル 「Designing Tokyo」 制作:電通
ヘルス&ウェルネス部門
- ドリーム 「30秒サイズの小さな石鹸 Pocket Soap」 制作:TBWA/HAKUHODO
メディア部門
- IBM 「Meet Your Second Life」 制作:ジオメトリー・オグルヴィ・ジャパン
プリント&パブリッシング部門
- NHK 「The Hidden Essence 〜 浮世絵EDO-LIFE(テレビ番組シリーズ)」 制作:NHK
(文:水野龍哉)