オスカー賞受賞の映画監督スパイク・リー氏によれば、広告のプロフェッショナルは、広告主のために売上げをあげることが、第一の目的であることを忘れてはならない、という。
リー氏は、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで、2023年に新設された、名誉クリエイティブ・メイカー・オブ・ザ・イヤーに選出され、スピーチを行った。
映画プロデューサーであり、俳優でもある彼は、ナイキやリーバイスのテレビCMの監督も務めている。彼は、広告業界の「トリック」は、優れたクリエイティビティと広告主の売上増加のバランスの上に成り立っていると語った。
しかし、クリエイティブの水準を保ちながら、商品を売ろうとすることは「難しい」ことだと、彼も認める。
カンヌで開催された、活動団体「ブラック・アット・カンヌ」主催のメディア向けイベントのセッションで、リー氏は広告業界関係者にアドバイスを送った。「(ブランドのために)できるだけ多くお金を稼ぐことが最優先だ。そうした立場がイヤなのなら、クビになるほかない」。
どうすれば、優れたクリエイティブであると同時に、商品売上につながる作品を作れるのか。これこそが広告のトリックだ、と彼は付け加えた。
「正直に言おう。あなたの仕事は、石鹸やスープ、ファーストフードや電化製品を売るためにある。つまり、多少の誇張や嘘を交えながら、欲望を喚起してものを売ることにほかならない」。
彼は言う。 「優れたクリエイティブには満たすべき基準がある。だから広告を作るのはとても難しい。広告では、ものを売るなどというくだらないことを最優先に考えなければならないからだ」。
リー氏は、ブランドやエージェンシーと仕事をした自身の経験から、彼らが「作品のテーマについて(中略)自分たちの方が私より知っていると(思い込んで)いる」ことがあったと明かした。
彼は、広告を制作する際、クリエイティブの方向性に意見の相違が生じるのは 「自然なこと」だと言い、撮影が行われる前に問題を解決しておくべきだと強調した。
「エージェンシーとブランドが右に行きたがっていても、私は左に行きたいときがある。繰り返しになるが、仕事のオファーを引き受ける前に、そのような方向性の違いは解決しておくべきなのだ」。
「クリエイターにはビジョンがある。そのビジョンをしっかり伝えておくことが重要だ。撮影が終わってから編集室にこもって言い争うのではなく、その場で解決した方がいい」とリー氏は語った。
リー氏は、「映画製作とテレビ界への広範かつ顕著な貢献」がクリエイティブ業界に残した足跡を評価され、今年、新たに設けられたカンヌライオンズのアワードを受賞した。