WPPのサー・マーティン・ソレルCEOの「個人的な不正行為」と会社資産の使用について調査が行われると、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じた。WPPグループの社員たちはこのニュースに大変驚いているという。同社の上層部は「こうなるまで取締役会で解決できなかったのは深刻な事態」と話す。
WWPの取締役会(議長はロベルト・クァルタ氏)は「ソレル氏の個人的な不正行為疑惑について、独立機関による調査を行う」と、中立的で短い声明を発表。一方でソレル氏も、疑惑を否定する声明を発表した。
調査の詳細について、明らかにされていることは少ない。ソレル氏の率いるWPPグループは、過去12カ月間で業績が悪化し、同社の株価は約3分の1も下落。クライアントがエージェンシーにより一層の透明性を求めるようになったこと、デジタルマーケティングを自社内で行うようになったことの影響を受けたものだ。
ここで大きな疑問となるのは「調査によって何が明らかになるのか?」、そして「取締役会はソレル氏を支えるのか?」であろう。調査はできる限り早急に行われるというものの、それがどの程度の期間となるかは不明だ。アレン・アンド・オーヴェリー、スローター・アンド・メイを含む3つの法律事務所が関わるとみられる。
現在73歳のソレル氏は、細部まで細かい指示を出すことで知られている。WPPの本拠地があるロンドンでは、ソレル氏と取締役との間の緊張感について憶説が飛び交っていた。今回の件で「ソレル氏の後任は誰か?」と新たな疑問が浮かび上がる。
WPPの構造改革が急務であることは明らかだが、同社の動きは遅かった。あるロンドンのアナリストは「メディアバイイング事業で切り抜けてはいるが、その場しのぎにすぎない」と語る。
ソレル氏は一連のグループ内でのエージェンシー合併を指示してきたが、それでもまだ不十分だという意見も少なくない。今回の報道を受け、同社の株価は2%下落した。投資家はこの件を、過度に危惧してはいないようだ――それがたとえソレル氏退陣という結果につながったとしても。
常日頃から「株主に求められる限り、経営の指揮を執りたい」と語ってきたソレル氏のことだ。この騒動をうまく切り抜けたいと考えているだろう。歴史への造詣が深い同氏だが、自身がどのように歴史に名を残すか、これまで以上に熟慮することとなるだろう。
(文:ギデオン・スパニエ 翻訳・編集:田崎亮子)