ウォルト・ディズニー・カンパニーは11月20日に声明を発表し、元CEOのボブ・アイガー氏は、同社を導くに「比類なき人物だ」と評した。
2020年2月までの15年間にわたってCEOを務めていたアイガー氏は、事実上、この声明をもってディズニーのトップに返り咲いた。彼は、すでに「退任」したボブ・チャペック氏の後任となる予定だ。
会長のスーザン・アーノルド氏は声明の中で、チャペック氏への感謝を述べた後、「ますます複雑化する業界が変革期を迎えるにあたり、ディズニーの取締役会は、この極めて重要な時期、ボブ・アイガー氏が、会社を導くことにおいて、他に比類なきほど適した人物だという結論に達した」と述べている。
アーノルド氏のこの言葉は、投資家の不安を払拭し、会社を安定させるために、アイガー氏を再登用したことを示唆している。ディズニーは11月に第4四半期決算を発表したが、売上、利益ともにアナリストの予想を下回る結果となっていた。
また、決算発表の直後には、チャペック氏が、雇用凍結、人員削減などのコスト削減策を発表していた。
アイガー氏が復帰するというニュースを受けて、ディズニーの株価は、11月21日に急騰した。
従業員重視の姿勢
ディズニーの声明は特に、アイガー氏と経営幹部、従業員との関係に焦点を当てていた。
アイガー氏は「ディズニーの経営幹部から深い尊敬(を集めている)。11カ月前に会長を退任するまで、経営幹部のほとんどと緊密に連携していた。また、世界中の従業員からも非常に尊敬されている」とアーノルド氏は強調した。
さらに、アーノルド氏はこれらを理由に、「リーダーシップを円滑に移行できる」と断言している。
ディズニーがアイガー氏と従業員の関係を重視していることは、チャペック氏が短い任期中に犯した失敗を考えると、とても偶然とは思えない。チャペック氏は米国フロリダ州の「ドント・セイ・ゲイ」法案(教育者が、性同一性について教えることを禁止する法案)を公に非難することを拒否し、この件に関する「沈黙」を従業員宛ての手紙で謝罪した。しかしその後、従業員は抗議デモを敢行し、対応を怠った経営陣への失望を公開書簡で表明した。
ディズニーがアイガー氏に復帰を要請
声明の中で一度だけ引用されたアイガー氏の言葉によれば、ディズニーは直接アイガー氏に復帰を要請したようだ。
声明では、アイガー氏の発言として「(ディズニーの)取締役会からCEOへの復帰を要請され、喜んでいる」と述べられている。
「この素晴らしいチームを再び率いることを要請されたことはとても光栄だ。このチームには比類なき大胆なストーリーテリングで、あらゆる世代に感動を与える、卓越したクリエイティブの創造という明確な使命がある」(アイガー氏)
復帰の期間は決定済み
アイガー氏の2度目の任期は2年のみとなる予定で、「再成長への戦略的な方向性の決定を取締役会から委任」されているという。
また、アイガー氏は取締役会と緊密に連携し、退任前に後継者を育成することになる、と声明では述べられている。
ディズニーがアイガー氏の契約期間を予め発表したのは、投資家や消費者が、CEOの退任で再び不意を突かれることを防ぎ、次のリーダーの任命について、入念に準備を進めるためだと思われる。