今日、もはや例外なく全ての業界において、急速かつドラスティックなデジタル化が進展し、市場競争環境は不可実性を増しており、既存の競争原理は業界や国境を越えて破壊されつつあります。こうした環境下で企業が勝ち抜いていくためには、デジタルテクノロジーとビジネスを結び付け、顧客ニーズを深く洞察し、迅速に対応する力を持つことが急務です。また、消費者を取り巻く環境と生活者自身の行動も日々変化し続けており、魅力的な「顧客体験」を提供することが企業競争の源泉となっています。
世界各国の企業の意思決定者を対象に行った調査「Digital Transformation in the Age of Customer」でも、多くの企業が「顧客体験」をビジネスの最優先事項として捉えていることが明らかになりました。しかし、デジタルを活用して提供する顧客体験について、大半の企業は「競合他社と差別化できていない」と回答しています。今後、顧客の期待を超えたデジタル体験を提供することが、どの業界においても一層重要となると考えております。
また、消費者側に目を向けてみると、製品やサービスに執着心のない無関心な消費者が増えているという傾向も、別の調査(Accenture Global Consumer Pulse Survey)で明らかになっています。購入前に入念な検討を行わない消費者が先進国に出現しており、特に日本では6割以上の消費者にその傾向が見られます。今後、日本企業は消費者を深く理解し、消費者自身も気が付かないような潜在的なニーズをつかみ、消費者の期待を超える顧客体験を先回りして実現していく必要があります。
このような変動の激しいデジタル化時代において、消費者にとって魅力ある「顧客体験」を実現するために、企業は、商品やサービスそのものだけでなく、組織体制、企業理念・文化、オペレーションなど企業全体を大きく変革させていく必要があります。マーケティング部門やIT部門だけでなく、各企業の経営トップがデジタルを経営課題の最重要課題として捉え、迅速にデジタル変革を遂行しなければなりません。我々はデジタルマーケティングを、この変革を実現するための手段の一つとして考えています。デジタルマーケティングやデジタルテクノロジーを活用して顧客の期待以上の体験を実現し、顧客起点でのデジタル変革を実現することが、2017年もますます重要になってくるでしょう。
(文:黒川順一郎 編集:田崎亮子)
黒川順一郎氏は、アクセンチュア・インタラクティブ統括マネジング・ディレクター。