Matthew Keegan
2024年5月29日

パリ五輪で成功を目指すために必要なこと

世界的なスポーツの祭典で、アジアのブランドはどのように広告費を最大限に活用しているのか、マーケティング戦略を成功させる鍵は何か、若いファンを取り込むのに最適なプラットフォームは何か。

パリ五輪で成功を目指すために必要なこと

* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

2024パリ五輪では、フランスの首都に1,500万人の観光客が集まり、10億人がテレビ中継で競技を観戦すると推定される。この夏最大のスポーツイベントの開催まで、あと数週間となった。

大会の準備は大詰めを迎え、リサイクル鋼材で作られる幅29メートル、高さ15メートルのオリンピックリングは、間もなくエッフェル塔の南側に飾られる。7月にセーヌ川で行われる開会式では50万人の観客の前を、203カ国の選手たちがボートに乗って下っていく。

大会では32競技329種目が行われ、その中にはサーフィン(開催地はタヒチ)、スポーツクライミング、ブレークダンス、スケートボードの4競技が新たに加わる。予算は88億ユーロとなる見込みだ。

「スタジアムを満席の観客で埋め尽くす五輪大会は2016年以来であり、すでに10億ユーロ以上のスポンサー収入を確保しています」と語るのは、VMLの一部門であるプリズム・スポーツ&エンターテインメント(Prism Sport & Entertainment)のマネージングディレクター、シェーン・オサリバン氏だ。「私たちは、オリンピックブランドの完全復活を期待しています」。

エアビーアンドビー(Airbnb)、インテル(Intel)、コカ・コーラ(Coca Cola)といった世界トップクラスのパートナーに加え、LVMH、カルフール(Carrefour)、アコー(Accor)といった仏企業の提携が増えているのは予想していた通りだ。

「記録的な数のブランドアクティベーションが見られるかどうかは未知数です」とオサリバン氏。「しかし、膨大な数のキャンペーンが実施されることは間違いありません。そして夏の大会までの長いリードタイムの間に、すでに多くのキャンペーンが始まっています」。

ブランドにとって絶好のチャンス

五輪が他に類を見ないグローバルなマーケティングプラットフォームを提供していること、そして世界で最も有名なブランドとの提携が可能な場であることは、疑いの余地はないだろう。

国際オリンピック委員会(IOC)のマーケティングコミュニケーション担当責任者であるベンジャミン・シーリー氏は、今年はスポンサーシップパートナーと協力して、アクティベーションの種類やオーディエンスへのリーチを高める革新的な方法について新境地を開拓中だとCampaignに語った。

「オリンピックのスポンサーシップは、ブランドの製品やソリューションを真に統合し、単純な『ブランド認知度』以上のものを提供します」とシーリー氏。「世界的な舞台で世界中から注目され、ブランドの能力をはっきりと示すことになります」。

しかし五輪でグローバルな活動を存分に展開できるのは、TOP(The Olympic Partner)プログラムに参加できるブランドに限られている。

「このカテゴリーの独占性によって混乱を避け、ブランドがターゲットとするオーディエンスとの明確なエンゲージメントを構築できるようになります」とシーリー氏は言う。

IOCのTOPパートナーの中に、中国ハイテク大手のアリババ(阿里巴巴)がある。同社は2017年にワールドワイドパートナーとして契約を締結し、2028年までTOPスポンサーであり続ける。2024年のパリ大会では、クラウドベースのAIを使って歴史的瞬間を届け、革新的な視聴体験を提供する計画だ。

「アリババは深層学習モデルを活用して、1924年にパリで開催された夏季五輪に溯り写真や映像を復元し、カラー化をしています」と語るのは、アリババグループで戦略開発部門を率いるクリス・タン氏だ。「当社のクラウドベースのAIモデルは、昔の五輪大会の画像や映像の品質向上に役立ち、視聴者はAIイノベーションのレンズを通して100年にわたる五輪の歴史を目の当たりにすることができるのです」。

一方アリババは最近、中国のファンに向けて2024パリ五輪のブランド公式グッズをTモール(天猫)のオリンピック公式ストアで発売した。アリババのBtoCのECサイトであるTモールでのグッズ販売が始まったのは、大会開幕まで100日となった日だった。

2024パリ五輪の公式グッズが、アリババグループのECサイト「天猫」のオリンピックストアで発売が開始した。
 

「中国のファンは、2024パリ五輪の公式マスコット『フリージュ(Phryges)』のぬいぐるみや、これがエッフェル塔と並んだフィギュア、五輪をテーマにした記念硬貨など、さまざまなライセンス商品とともに、ワクワクしながら開会の日を迎えることができるようになります」とタン氏。「これはほんの始まりで、今後数カ月間や大会会期中にもっと多くのアクティベーションが実施され、公開される予定です」。

長年のオリンピックパートナーでもあるサムスン(Samsung)は、パリに革新的なブランドショーケース「オリンピック体験館」を開設し、大会に向けた活動を活発化させた。シャンゼリゼ通りに位置する体験館では、同社のモバイルテクノロジーを体験し、オリンピックパートナーシップについて学び、五輪に関連したさまざまなインタラクティブな活動に参加することができる。

 
サムスンはパリの中心部に、オリンピック体験館をオープンした。
 

アリババやサムスンのようなトップクラスのオリンピックパートナー以外にも、国内外のブランドやメディアライツホルダー(放送権者)によるマーケティング活動や大会プロモーションが、早い時期からかなりの規模で行われている。

オグルヴィAPACの最高戦略責任者であるアーヴィンド・スリヴァスタヴァ氏は、「アジアの新興国にとって、五輪は今も世界の舞台への進出を宣言する重要な手段」と語る。「私たちのチームは五輪に向けて、多くのブランドと緊密に協力しています。飲料から自動車までさまざまな分野のブランドが五輪に力を入れており、国際的な有名企業がアジア太平洋地域、特に中国市場とインド市場でのアクティベーションを計画しています」。

豪州では自動車保険会社「NRMAインシュランス(NRMA Insurance)」が、これまでで最もコネクテッド技術を駆使する大会に参加する機会を得た。同社はメディアへの投資を大きく増やし、民放テレビ局「ナイン・ネットワーク(Nine Network)」の競技放送パートナーになることを決めた。

「南半球は夏ではなく、夜は長くて寒いため、家にこもって観戦するのに適しています」と、イニシアティブ(Initiative)で戦略担当責任者を務めるアリ・コイシュ氏は語る。「時差があるため、あらゆるタッチポイントを網羅し、見逃し配信(キャッチアップ)の視聴者を最大限に活用することに全力を注ぎます。豪州ではリニア視聴に依存することはできません。キャッチアップやソーシャルメディア、ニュースといった幅広いサービスのすべてが、2024パリ大会の体験となるのです。視聴者がいつ、どのような方法で観戦しようとも、NRMAとしては寄り添っていきたいと考えています」。

成功するためのマーケティング戦略

2020年の東京五輪以降、世界のメディア事情は大きく変わった。人々はもはや自宅のテレビの前で、試合に釘付けになっているわけではない。実際に、デジタルメディアはかつてないほど多くの人の目に触れるようになり、ブランドが注目を集めるのはこれまで以上に困難になっている。それだけでなく、五輪では注目を集めようとするロゴが溢れかえることだろう。これを切り抜ける鍵は何だろうか?

TRAの戦略担当責任者であるカール・サーニー氏によると、ブランドがトップに立つためには、主に3つの戦略があるという。

一つ目は、潤沢な予算がある場合には存在感を最大に示し、余裕のある限り多くの広告枠を買い取ること。二つ目は、大きな話題を生み出し、予想外でありながらも共感できることを行うブランドになること。これはつまり、ブランドについて誰もが話さずにはいられなくなるような、面白い話題を提供するということだ。三つ目は、違った角度から考えること。どうすればあなたのブランドは、非公式ながらも大きなインパクトを与え、スクリーンの中や人々の会話の中に入り込むことができるだろうか?

「2012年のロンドン五輪で、ビーツ・バイ・ドレー(Beats by Dre)がさまざまな有名アスリートに同ブランドのものと一目で分かるヘッドフォンを無料で配り、ウォームアップ中の選手が装着する姿が映し出されたのを覚えているでしょうか?」とサーニー氏。「IOCはスポンサーの権利を保護するために厳しい規則を設けていますが、ビーツ・バイ・ドレーは人目を引くヘッドフォンをアスリートに使ってもらうために報酬を支払ってはいなかった。そのため、ぎりぎりのところで免れることができたのです」。

マーケターは、世界中のオーディエンスがどこにいて何をしているか、何を必要としているか(スーパーマーケットでスナックを買い込む、五輪に関する事実や統計を検索する、お気に入りの選手の試合を観戦するためにリマインダーを設定するなど)、発想を拡げることもできる。このような瞬間を逃さずに、そのブランドらしいアプローチでオーディエンスの目の前に現れる方法を考えるよう、サーニー氏は勧める。

何よりも、ブランドはスポーツウォッシング(不祥事や悪いイメージの払拭にスポーツを利用すること)を避けなければならない。

「スポーツについて語るブランドが、本当にサポートを提供するということは不可欠です」。オグルヴィ・メルボルンのエグゼクティブクリエイティブディレクター、ヒラリー・バジャー氏はこのように語る。「ブランドはスポーツを取り巻くエコシステム、つまりアスリートだけでなく、運営を支えるボランティアなどを含めて考慮することもできます。五輪は常に、アスリートを夢見る若者たちが円盤やサッカーシューズを手にするきっかけになってきました。ですから、あらゆる年齢層や能力の人々が草の根レベルで参加できるようにするブランドが成功するというのが、私の見解です」。

最適なプラットフォームとは?

五輪はあらゆるメディアプラットフォームにおいて、世界最大級の視聴者数を誇っている。五輪は一般的に、そして特にアジアにおいても、視聴がテレビ画面から携帯端末へと移行した若い世代から、必要とされる存在であり続けるという課題に直面している。

「このような視聴者を引き付けるには、キャンペーンは彼らの言葉で語り、彼らがよく利用するプラットフォームでつながる必要があります」とスリヴァスタヴァ氏。「大規模なビルボードは、インスタグラム、微信(WeChat)、微博(Weibo)上のスクロール可能な『ビルボード』に取って代わらなければなりません。アスリートやセレブリティーはブランドとの関係を深めるため、自身のソーシャルチャネルを活用するでしょう。60秒の昔ながらのソニックアンセムも、抖音(Douyin)、ティックトック(TikTok)、リール(Reels)に合わせたリズムやビートに進化させる必要があります」。

IOCがマーケティング規制を緩和したことを受けて、アスリートはこれまで制限されていたようなコンテンツをシェアする自由度が高まった。

「アスリートが選手村や、ファンとしてチームメイトをサポートする様子など、これまで見ることができなかったコンテンツを提供する動きが、2020東京五輪から見られるようになりました」とオサリバン氏。「パリ大会では、アスリートとファンとの直接的な交流や、ティックトックなどとのパートナーシップがさらに増えると予想しています。このことでアスリートに対する理解がこれまで以上に深まり、アクセスが増える新たなチャンスが生まれます」。

2024パリ五輪は、従来型のリニアTVからBVOD(放送事業者による配信サービス)、ラジオ、ポッドキャスト、印刷物、さらにはOOHに至るまで、コンテンツの種類が最もバラエティーに富むものとなりそうであり、興味深い。

「大会期間中に注目を集めたいブランドにとって重要なことは、付加的なアプローチをとることです」とサーニー氏。「あなたのブランドはどのようにしてオリンピックの精神を広め、人々の会話を盛り上げることができるでしょうか? もしブランドが五輪に何らかの価値を付加していると認識されれば、ブランド力と売上が高まるという相互効果を享受できる可能性が高くなります」。 

 

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