この会社は「インフルエンサーマーケティングプラットフォーム」を名乗る「フェイズ(Fazze)」。依頼を受けたのはユーチューブ上で100万人超のフォロワーを持つフランスの若手科学解説者レオ・グラッセ氏と、同じく150万人のフォロワーを持つドイツのポドキャスター、ミルコ・ドロシュマン氏。
両氏は数千ポンドの報酬の見返りに、「ファイザー製のワクチンの死亡率はアストラゼネカ製の3倍」と訴えるショート動画を制作し、拡散するよう依頼された。
両氏は依頼内容の一部をツイートで公開。その中には、「『主要メディアはファイザー製ワクチンの危険性について一切触れていない。各国政府が国民の安全を顧みずに買い上げるのはおかしい』と主張してほしい」などと記されている。
また、「動画の中ではこの問題に強い関心を抱いているように振る舞い、自分自身の意見を述べているように見せてほしい」とも。
フェイズ社のホームページを見ると、「ブロガーと広告主をつなぐマーケットプレイス」とあるが、所在地や連絡先は一切記されていない。詳細を把握するには、閲覧者の個人情報を先に登録させる仕組みだ。
ロシアはこのひと月ほど、「ファイザー製のようなmRNAワクチン(病原体を構成するタンパク質の設計図を投与して免疫をつけるタイプ)は、我が国が開発したスプートニクⅤよりも安全性が低い」などという主張を繰り返している。
欧州連合(EU)は、ロシアと中国が欧米製ワクチンへの信頼を損ねるため「国家ぐるみで偽情報キャンペーンを行っている」と非難。
ファイザーのスポークスパーソンはこれらの件に関して直接的な言及は避けたが、以下のようにコメント。「人々の間でワクチンに対する抵抗感が強まり、ソーシャルメディア上で偽情報が増えていることは承知しています」
「我が社はパートナー企業とともに、パンデミックと全力で闘っています。バイオテック社と共同開発したワクチンに関しても、正しい情報が迅速に行き渡るよう努めています。皆様には、様々な情報の発信源とその信頼性を入念に考慮していただくようお願いしたいと思います」
(文:イアン・グリッグス 翻訳・編集:水野龍哉)