広告業界と同様、フェイスブックの成長には限界がある
フェイスブックは今週、停滞の兆候を初めて見せた。売上高やユーザー数の増加率が予想を下回り、株価が20%以上急落したのだ。第2四半期の売上高は前年同期比の42%増、純利益は31%増と、決して悪い兆候ばかりではなかったものの、成長が鈍化しているのは疑いようがない。ピボタルリサーチ(ニューヨーク)で広告について調査を行うアナリスト、ブライアン・ウィーザー氏は投資家向けの電子メール内で、広告業界全体が直面する課題からはフェイスブックも免れることができないと指摘した。
「広告業界やデジタル広告業界の成長には、限界があります。そしてこの限界が、収益機会を阻んでいるのです」。また、30%以上もの成長はいつまでも続かないとも言及する。
フェイスブックの広告売上のうち91%はモバイルによるもの。主な収入源となっているのは、6月にユーザー数が10億人に達したインスタグラムだ。同プラットフォームの昨年の売上はフェイスブック社の広告収入全体のわずか10%だったが、現在は5割を超える。長期的に見て、フェイスブック社の成功に最も寄与するのはインスタグラムだろう。マーク・ザッカーバーグCEOが2012年にこのプラットフォームを10億米ドルで買収したのは、賢明な投資だったといえる。
グーグルとアマゾンのシェア、さらに拡大
ウィーザー氏の分析には納得のいく部分が多いものの、グーグルやアマゾンについての見通しは明るい。グーグルの広告売上は336億米ドルで、前四半期から24%の伸びを見せた。調査会社「イーマーケター」によると、グーグルの今年の広告売上高はグローバル全体で847億米ドルとなる見込みで、デジタル広告市場の31%ものシェアを占めると予測されている。大きく引き離されて2位となるのはフェイスブックで、シェアは18%。
また、イーマーケターは今週配信したレポート内で、アマゾンの広告売上はデジタル広告市場の1.2%にあたる約34億米ドル(58%増)に達すると予測。モバイル広告の売上は11億ドル近く(122%増)になる見込みだ。成長においてキーとなるのは、同社で4番目の売上規模を誇る日本市場だという。
収入減となったカンヌライオンズ
世界最大の広告祭であるカンヌライオンズは、参加者数や応募件数の減少に伴い、収入が9%減(前年比)となった。運営会社であるアセンシャルによると、今年の収入は約7500万米ドルであった。ピュブリシスは今年のカンヌへの不参加を表明していたものの、何名かが参加した。昨年は贅を尽くしたイベントが1週間にわたって開催されたが、今年は5日間へと短縮。広告会社が苦境に立たされる中、カンヌのような広告賞も見直しを迫られている。
一方でアセンシャルは、ブランドの広告担当と直に連携して実施するプログラムなど、パートナーシップ領域で成長を遂げている。また今年のカンヌライオンズでは、たばこ業界大手のフィリップ・モリスが大きなブースを設置したことも驚きだった。同社は「クリエイティブコミュニティー」と定義する層に向けて、煙の出ないスモークフリー製品を積極的にプロモートしている。
透明性に疑問、それでもブランドはインフルエンサーを重用
ユニリーバなど複数のブランドは、フェイクフォロワーが多すぎるとしてインフルエンサーマーケティングに厳正な措置を取ることを発表した。にもかかわらず、インフルエンサーマーケティングへの依存度は弱まりそうにない。世界広告主連盟(WFA)が34の主要ブランドを対象に行った調査では、その65%がインフルエンサーへの支出を増額する予定だという。
ほとんどのブランド(71%)は「消費者にとってインフルエンサーの透明性は極めて重要」と答えたが、5%は「まったく問題ではない」。ブランドとの関係性を示すやり方は、ハッシュタグの使用やタイアップの表記、記事や動画内での説明が一般的なことも分かった。また、ほぼ全てのブランドがインフルエンサーの評判とそのフォロワーの質が「最重要」と回答。だがインフルエンサーに関する規制は依然としてなく、こうした判断を難しくしている。インフルエンサーへの支出を増やして損失を被ったブランドであれば、予算の無駄遣いを繰り返したくはないだろう。そのためには、インフルエンサーに対する厳格化を求めていくしかない。
広告業界のダイバーシティ、「遅々として進まず」
BBHニューヨークが50人のプランナー志望者を対象に行った調査で、その3分の1が「広告業界はダイバーシティに積極的ではない」と答えた。一方で回答者たちは、今の状況を変えたいという意欲も示している。自由な意見を求める項では、ある者は「将来は他の若い女性たちのメンターとなり、この業界のゲイの人々の地位を向上させたい」と答えている。またある者は、「目標は自分自身の活動と仕事を結びつけること。成功とは縁の薄い、他の若い有色人種のプロフェッショナルたちにも道を開いていきたい」。
BBHニューヨークでグローバル・戦略の責任者を務めるサラ・ワトソン氏は、「広告業界が包摂性とダイバーシティを実現するには、まだ長い時間がかかることを示唆しています」。それでも、若い世代がこうした重要な問題を解決したいと願っていることは「とても心強いことです」。
Campaign推奨、チャリティーの無料広告スペース
マインドシェアは、時間外に企業や個人が使う電子メールの空きスペースを、チャリティー広告のために活用できる無料ソフトウェアを発表する。このソフトはマイクロソフトOffice365のユーザーを対象としたもので、今年後半から展開する予定。時間外に使う電子メールにはたくさんの空きスペースがある −− そんな発想から生まれたこのアイデア。既に英国では3つの慈善団体がこのサービスを試験的に運用している。マインドシェア・ロンドンのエグゼクティブクリエイティブディレクターを務めるベッキー・パワー氏は、次のように語る。「慈善団体のメッセージを見るたびに、そのスペースにお金を払っているのだろうと考ずにはいられませんでした。広告費は安くありません。このソフトを使えば、慈善団体は無料でメッセージを人々に送信できるのです」。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子、水野龍哉)