電通の「内部通報」、2倍以上に
電通グループが「統合レポート2023」をウェブサイト上で公開した。それによると、国外における「内部通報」件数は163%の増加。2021年は38件だったのに対し、2022年は100件に上った。因みに2020年は43件、2019年は35件だった。
内部通報の窓口は社内で「Speak Up」と呼ばれる。同社によれば、告発内容は主として「人権侵害、いじめ、ハラスメント、差別」。
電通は日本国外と国内で別々の通報窓口を設置している。昨年の国内の内部通報は101件で、2021年の136件より減少。2020年は106件、2019年は194件だった。また「コンプライアンスライン」への通報は12件。2021年は6件、2020年は10件、2019年は17件だった。
「今後はグループ共通のプラットフォームを導入することで、通報案件の一元管理を図っていく」と同レポートは記す。
世界の広告業界で「ビッグ6」と呼ばれるエージェンシーグループでは、電通のほかWPPとピュブリシス・グループが内部通報に関する結果を公表。WPPは昨年299件(一昨年比24.7%減)、ピュブリシスは84件(同121%増)の通報があった。
周知のごとく、電通は2020年東京五輪・パラリンピック大会テストイベントの入札等事業に関し、独占禁止法違反の疑いで捜査を受けている。この件に関しティム・アンドレー取締役会議長は、「取締役会はこの事態を重く受け止め、調査で判明したことを透明性をもって共有し、対策をお知らせしている」とレポートに記述。「取締役会・経営執行・グループ全体それぞれのレベルで、コンプライアンス、リスク管理、透明性、倫理的な意思決定のベストプラクティスを真摯に取り入れ、ガバナンスに大きな変化を生み出してきた」と述べている。
米高級ブランド、親会社が統合
「コーチ」「ケイト・スペード」「スチュワート・ワイツマン」といった高級ブランドを擁する米タペストリー社が、「ヴェルサーチェ」「ジミー・チュウ」「マイケル・コース」などを有するカプリ・ホールディングスを買収した。買収額は85億ドル(約1兆2000億円)。これによりタペストリーの年間売上高は120億ドルとなる。
米国では個人消費が停滞傾向を示し、高級ブランドは成長の糸口を模索する。合併・買収による事業の拡大・多角化は増加傾向だ。
両社の統合は、これまでのところ高級ブランド業界で最大の動き。「ルイ・ヴィトン」「ディオール」などを擁する仏LVMH、「グッチ」「サンローラン」のケリング・グループなど、欧州の巨大企業への対抗を視野に入れる。
「統合により、今後3年間で運営費やサプライチェーンのコストなど2億ドルが節約でき、D2Cビジネスの成長が期待できる」と両社はコメント。
買収発表後、タペストリーの株価は16%下落、カプリの株価は56%上昇した。タペストリーのジョアン・クレボイセラCEOは、「買収によって強力なグローバルラグジュアリー企業が誕生する」と自信をのぞかせている。
TikTokの写真加工フィルター、メンタルヘルスに悪影響?
TikTok(ティックトック)やインスタグラムといったソーシャルメディアでは、顔の輪郭を整えたり肌をなめらかに見せたりする写真加工フィルターが人気だ。
だがこうしたフィルターが生み出す「非現実的な美」は、ユーザーのメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があることが最新調査でわかった。
調査を行ったのはビューティーとヘアの専門アプリ「スタイルシート(StyleSeat)」。調査ではティックトックの最新加工技術「ボールドグラマー」を700人に使ってもらい、どのように思うかを尋ねた。その結果、5人に1人が加工された自分のイメージに「不安感を抱く」と回答した。
また70%は「自己評価に悪影響を及ぼす」と回答。これは特にZ世代(1990年代半ばから2010年代前半に生まれた世代)に顕著で、72%が「加工フィルターはメンタルヘルスに悪い」と答えた。
加えて全体の8割は、「加工フィルターが美の基準を変えてしまった」と答えた。
さらに3人に1人は「加工技術の使用には年齢制限を設けるべき」と答え、5人に1人は「全てのユーザーの使用を禁止すべき」と答えた。
スタイルシートは、ボールドグラマーを調査対象とした理由に「人気の高さ」を挙げる。調査時も、ボールドフィルターを使用した動画視聴回数は9億4100万回に達した。
最新のAI(人工知能)を活用したボールドグラマーは、これまでの加工技術より進化。各人の顔に合わせ、まるでメイクを施したように見せる自然な仕上がりが特徴だ。
エニーマインドCEO、MMAグローバルのボードメンバーに
東京に拠点を置くテック企業「AnyMind Group(エニーマインドグループ)」の十河宏輔CEOが、MMAグループAPAC(アジア太平洋地域)のボードメンバーに就任した。
エニーマインドはブランドの生産、EC構築、マーケティング、物流をワンストップで支援する。2016年、十河氏が29歳の時にシンガポールで設立、現在は1300名以上の社員を有し、世界13市場で事業を展開する。
MMAはマーケター、マーケティングテクノロジー、メディア企業のエコシステム全体を統括する業界団体。世界15の地域にオフィスを構え、会員企業は800社以上。各社CEOが活動に従事、マーケティング業界の発展を目指す。
MMAグローバルAPACのボードメンバーにはグーグル、メタ、グラブ(Grab)、ティックトック、ピュブリシス、P&Gといった企業のエグゼクティブが名を連ねる。
十河氏は、「当社が7年という比較的短い期間において、マーケティング業界に与えたインパクトを評価いただいたものであり、大変喜ばしく思います」とコメント。
またMMAボードメンバーでAPACマネージングディレクターを務めるロイット・ダドウォル氏は、「彼のECやマーケティングにおける豊富な経験と、業界・企業・個人の成長を促す情熱はMMAにとって大きなプラスになる」と述べている。
(文:水野龍哉)