オグルヴィ、グローバルのクリエイティブ責任者を解雇
オグルヴィが今週、同社のクリエイティブをグローバルに率いるタム・カイメン氏を「彼の行動に関する苦情」を理由に解雇したことが、社内メモから明らかになった。タム氏は1999年から同社で勤務。調査の詳細が明らかにされないのは、WPPマーティン・ソレル前CEOのときと同様だ。
シンガポール出身のタム氏は長らく、広告界で世界中から尊敬を集めてきた。同氏は最近、オグルヴィのクリエイティブチーム内にシニアレベルの女性クリエイティブ職を、2020年までに20名にまで増やしていくと明言したばかりだ。
だが同社のジョン・サイファートCEOによると、調査によって「当社の企業価値や行動規範から明らかに逸脱した」行動が明らかになったという。また「上のポジションに就いているからとか、大切な社員だからという理由で、自らの行動に責任を負わなくてよい従業員は存在しない」とも。この言葉に胸をなでおろす社員も、不安感を募らせる社員もいることだろう。
ソレル氏、メディアモンクス買収後は日本進出か
マーティン・ソレル興の新会社「S4キャピタル」が今週、オランダのクリエイティブプロダクション「メディアモンクス(MediaMonks)」を買収した。買収は秘密保持契約違反だとWPPから指摘されていたにも関わらず、である。
買収額は約3億米ドル(約440億円)とされ、メディアモンクス側にとっては財政上喜ばしいことだろう。ただし、活気に満ちた自由闊達な社風で知られる同社の、社内文化の面においてこの買収が喜ばしいことなのかは、定かでない。ソレル氏はCampaignのインタビューで、インドとドイツに拠点を構える必要を説き、さらに「おそらく日本にも必要だが、それはもっと難しいことでしょう」と語った。
「次に必要となるのが、メディアデータやアナリティクスの領域での事業展開。その次にはデジタルメディアのバイイングが必要となります」とソレル氏。大切なのは、メディアモンクスの成長の要となってきたものを今後も守り、単なる自社グループ傘下の中の一社へと変えてしまわないことだ。S4キャピタルが将来メディアモンクスを、例えばコンサルティングファームに売却する可能性もあるだろう。同社の曖昧な提案からは予測が困難だ。
メルセデス・ベンツ、日本での広告をピュブリシスに託す
メルセデス・ベンツは今年2月、ピュブリシスをグローバルエージェンシーとして任命した。2社は国内で作業を始めるとみられる。メルセデス・ベンツに長らく携わってきた博報堂と、ダイムラー社に特化すべく設立されたグローバルネットワーク「ピュブリシス・エミール(Publicis Emil)」とで分担する予定。
この件がピュブリシスとレクサスとの関係に、どのように影響するのかは定かではない。レクサスはメルセデス・ベンツと直接の競合関係にあり、長くサーチ&サーチ(現在はピュブリシス・ワンの傘下)のクライアントでもあった。
ピュブリシス関連のニュースでいえば今週、エグゼクティブ・プランニング・ディレクターがフェイスブックに移ることが明かになった。
電通とトヨタの関係に緊張が走る
自動車関連の話題といえば、トヨタ自動車と電通の関係がぎくしゃくし始めているとロイターやビジネス誌『選択』が報じた。トヨタが中国で開催した自動車関連イベントで、電通による過剰な支出にトヨタ幹部が憤ったとされる。従来型の自動車産業がテクノロジー企業による脅威にさらされる中、同社はマーケティング費を削減して競争力を高めていきたい考えとのこと。
両社の事情に詳しい情報筋がCampaignに語ったところによると、電通によるトヨタへの不正請求が2016年に発覚するなど、さまざまなスキャンダルが明るみになったことを受けて、クライアント側と電通との力関係に変化が生じたようだ。
苦境に陥る英国の新聞業界、広告により協力的に
英国ではこのたび、全ての全国紙(フィナンシャル・タイムズを除く)の紙面広告と、各紙のホームページ上での広告スペースを一括して押さえられるようになった。掲載場所は、新聞の中面で読者が最初に目にする広告枠と、各紙ウェブサイトのトップページに設けられた広告枠(1日間)。広告主は約37.5万ポンド(約5500万円)で、英国内の2100万人への露出が可能となる。このことは、新聞業界がより柔軟になったことの表れだろう。だが、悲観的な一面も垣間見える。GroupMによると英国の新聞広告費は2011年から半減し、7.5億ポンド(約1,110億円)にまで落ち込んでいる。
デジタル相は「非デジタル」
英国からのニュースをもう1つ。英政府はデジタル・文化・メディア・スポーツ省の新たな大臣にジェレミー・ライト氏を指名した。だがこの肩書きに似つかわしくなく、同氏はこれまでデジタル分野との関わりはほとんどなかったようだ。極めつけはある政治ジャーナリストのコメント。それによると、2015年以降でライト氏がツイートを行ったのはわずか2回。また13年に及ぶ下院議員のキャリアで、「デジタル」という言葉を発したのもわずか2回だという。デジタルを司る政治家に、デジタル分野の経験を求めるのは酷なのだろうか? おそらくそうなのだ。
「反トランプ」抗議活動に見る、PRのケーススタディー
トランプ米大統領が13日、訪英する。これに抗議するため、巨大な赤ん坊姿のトランプ氏の風船が同日、英議会議事堂上空に掲げられる。当然ながら、この計画を承認したカーン・ロンドン市長の判断には議論百出。同時にこれは、「優れたPRキャンペーンのあり方」に関する論争とも言える。すなわち効果的なキャンペーンとは、要点を最も明確かつ強烈な言葉で表現する。大衆にどちらの側に立つか判断を強いる。そして肝心なのは、議論を呼ぶことだ。とどのつまり、PR戦略とは全て人畜無害である必要はないのだ。
まだお読みになっていない方に:
日本に新たな個人投資サービスのブランドが参入した。この分野は注目に値するが、業界各社は今のところ環境だけを整え、顧客がやって来るのを待つといった姿勢のようだ。なぜ、人々がもっと積極的に関われるコミュニケーションを編み出さないのだろうか。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子、水野龍哉)
来週は、Campaign Japanのニュースレターを休ませていただきます。再来週、7月27日から再開致します。