ペプシコの買収は、業界変革につながるか
先々週、プラスティックごみ削減に挑む東京都庁がコミュニケーション対策で苦悩しているという記事をお届けした。幸いなことに、プラごみの要因を生んできた消費者ブランドがやっとのことでその対策に乗り出すようだ。
ペプシコは今週、家庭用炭酸水生成器を扱うソーダメーカー「ソーダストリーム」を32億米ドル(約3520億円)で買収。ペプシコのラモン・ラグアルタCEO曰く、「ペットボトルを省いて消費者にリーチするための取り組み」。つまりプラごみを減らしつつ、ペプシコ・ブランドを家庭に浸透させようという戦略だ。ソーダストリームによれば「炭酸水を作るボトル1本で、平均的家庭の3700本分のペットボトルや缶を減らすことができる」。
日用消費財ブランドのほとんどは、世間からのプレッシャーを受けることでこうした対策をはじめてとる。プラごみに対する否定的見解は時代の趨勢となり、ブランドへのダメージは徐々に増加。だがグレイのロンドン支社で小売業界を専門とするロブ・セラーズ氏は、Campaignのインタビューで「主要ブランドにとってより大きな課題は、リテーラーが展開するプライベートブランド商品が拡大していること」と指摘する。
ソーダストリームはリテーラーを経ず、消費者に直接サービスを提供する。この新たな方向性で、ペプシコは「より多くの消費者データを吸収でき、総体的なブランドエクスペリエンスを創出できるでしょう」とセラーズ氏。
この話題よりもスケールは劣るが、英国ではコカ・コーラが「ゼロシュガー」をリブランド。瓶ボトルを含む全ての容器をクラシックなタイプに変更した。この4月から政府が導入したシュガータックス(砂糖税)への対応策だ。
ソフトドリンクの大手メーカーが、より健康的かつエコフレンドリーな商品で、消費者に対し新たなアプローチをとる必要性に迫られていることは確か。これをきっかけとして、業界に意義ある改革が起こることを期待したい。
ビデオゲームのTwitch、ユーチューブに「挑戦状」
ブルームバーグビジネスウィークによると、アマゾンが所有するビデオゲームマニア向けストリーミング配信プラットフォーム「Twitch(ツイッチ)」が、オンライン広告を更に増やすためユーチューブに似た動画サービスを計画中という。コンテンツはインフルエンサーやセレブリティに重点を置き、彼らには最低限のフィーと広告・視聴契約からの収入の一部が保証されるという。
Twitchの視聴者は1日1500万人で、どちらかと言うと大きな「パイ」ではない。だが動画コンテンツに選択肢が増えることは朗報だ。各プラットフォームが品質の高さを競い合えば、エコシステムは明らかにより良いものになる。広告主を筆頭に、誰もが歓迎する動きだろう。
ネットフリックスの広告ビジネスは成功するか
ネットフリックスが試験的に、番組の合間に広告を流し始めた。早速視聴者の不興を買っているが、これまでの広告はネットフリックスのコンテンツに関するもののみ。同社は「視聴者がコンテンツを選びやすくするためのもので、プレビューは気に入らなければスキップできる」とコメント。だがやがては、他ブランドの広告を扱うこともあり得るだろう。観測筋は、「ネットフリックスが広告を獲得するためには市場規模を広げることが必須」と語る。
現行の視聴者は当然ながら、この動きを歓迎していない。あるユーザーの以下のツイートが、主だった声を代弁する。「もしネットフリックスが広告を始めるのなら、契約を破棄します。コマーシャルは大嫌い。ネットフリックスにお金を払っているのも、2分ごとにコマーシャルを見せられるのが嫌だからです」。
我々もこうした意見に賛成したい。広告はどこにでもある必要はない。望まれていないところに露出させれば −− しばしばそういうケースが見られるが −− ブランドにとってはメリットよりもデメリットの方が大きいのだ。
「犬」にまつわるリブランドで、ひと騒動
犬は愛すべきペットとして、また忠実な友人として大方の人々にポジティブな印象を抱かせる。だがサウスチャイナ・モーニング・ポストによれば、ある中国企業が「ファーストドッグ(Fast Dog)」とリブランドしたことで自らを苦境に陥れることになった。ロジスティックスと配送のオンラインプラットフォームを運営する「58 Suyun(速運)」。信頼性の象徴として「犬」をネーミングに取り入れたが、人を犬と呼ぶのは中国では極めて侮辱的。雇われている運転手たちは、同社のアプリで顧客が「集配に『犬』を送ってくれ」とメッセージを送ることが「屈辱的」とし、「我々にも尊厳がある」「我々は犬ではない」と横断幕を掲げて抗議活動を展開した。
この騒動から得られる教訓は、特定のマーケットで新たな展開を行うときには、動物でも何でもその文化的な含蓄をよくリサーチすべしということだ。場合によっては、想像もつかない結果をもたらすことになってしまうから。
まだご覧になっていない方に:
自転車ブランドのofoが日本で苦戦を強いられている。事業を始めてまだ半年も経たぬうちに、マーケティングディレクターと日本市場統括責任者、PRマネージャーの3名が退職したのだ。潜在性の高いこの業界だが、既に多数の事業主が乱立。この数カ月内にいくつかのブランドが撤退する可能性を秘めている。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)