「社内に多様な人材を揃えるには、求職者の履歴や前職での給与といった点は考慮に入れない方がいい」。こう話すのは、マーケティング業界に多くの人材を輩出するブライトン・フィニッシング・スクール(英国)の創設者、アリー・オーウェン氏だ。
同氏はCampaign主催のイベント「メディア360」で登壇。広告業界は人材を獲得する際に「学歴や職歴にこだわるのではなく、職務への適応性にもっと目を向けて人を選ぶべき」と語った。
「高等教育を受けられない若者の比率は昨年、11%から25%に上昇しました」
「求職者がエディンバラ公アワード(青少年を対象とした奉仕活動やスキルなどの教育プログラム)を受賞しているかどうかは問題ではない。きちんと約束の時間を守り、人の話を聞けるかどうかを私は重視します」
また、これまでの報酬を考慮する必要がない理由として、「前職での給与は以前の雇用者の評価。それに影響されれば、アンコンシャスバイアスになってしまう」
「私は始終、多くの人々から有能な人材を推薦してほしいと頼まれます。そして彼らの前職での評価についても尋ねられる。しかし、それはあくまでも前雇用主の評価。そうした知識はアンコンシャスバイアスの要因になります」
これはジェンダーや民族・人種による賃金格差の要因でもあるという。
「求職者に委ねる仕事は、会社にとってどれだけの価値があるのか。我々はそれを見極め、それに応じた報酬を支払うべきです。それこそが公正な評価につながる」
同氏は「メディア・フォー・オール(MEFA、Media for All)」のジェネラルマネージャー、ニッキー・セーガル氏との公開討論にものぞんだ。MEFAは広告業界における黒人やアジア人の地位向上を目指す団体で、セーガル氏は「企業は、アンコンシャスバイアスを取り除く社員教育にもっと投資すべき」と訴えた。
「もしそれが難しいのなら、社内にグループをつくり、普段話しにくいテーマを従業員が自由に話し合える場をつくるべきです。話しにくいテーマを話しやすくしてあげる環境をつくることが大切」とセーガル氏。
その際には、従業員に「安心感を与える」。「彼らが悩みを包み隠さず打ち明けられる空気を醸成しなければなりません」
「そうすれば、企業が彼らの抱える問題に真剣に取り組み、解決しようとしていることをわかってもらえるはず。会社が自分に寄り添ってくれている、という実感を与えられるはずです」
(文:ショーナ・ルイス 翻訳・編集:水野龍哉)