スタートアップと大企業を結ぶTBWA HAKUHODOの子会社「QUANTUM(クオンタム)」が、サンフランシスコに初の海外拠点「QUANTUM GLOBAL」を設立した。
TBWA HAKUHODOは昨年、広告・コミュニケーション領域を超えたコンサルティングサービスを提供するため、クオンタムを設立。TBWAの世界的なネットワークや博報堂の国際的なパートナーシップといった経営資源を活用し、スタートアップと大企業を橋渡しする。改革や拡大を目指して試行錯誤する日本企業と、世界のスタートアップのコラボレーションが、双方にメリットのあるものとなるよう促すことが目的だ。また、スタートアップの手法が、企業の機能を見直すきっかけにもなると考えている。
クライアントの1社であるパナソニックとは昨年から、社内イノベーションを活性化させるプログラム「ゲームチェンジャー・カタパルト」に取り組む。パナソニックは、社内公募で選ばれた8の事業アイデアを「サウス・バイ・サウスウェスト2017(SXSW 2017)」にて公開した。さらに、オープンアクセス型DIY工房「テックショップ」と富士通の協働や、オンライン英会話「キャンブリー」の日本進出などにも携わる。
設立当初からの主要メンバーで、現在はQUANTUM GLOBALの社長も務める井上裕太氏によると、米国進出は日米双方からの需要があったためだという。「日本企業によるイノベーションを世界市場に発信するサポートと、米国のスタートアップが日本に進出する際の支援において、当社はすでに米国で活動してきました。しかし、急激に拡大する需要に対応するため、サンフランシスコのベイエリアを拠点とするリソースへのアクセスが不可欠になったのです」。井上氏は今後、サンフランシスコと東京で半々の勤務となる。TBWAの広報担当者によれば、クオンタムのサンフランシスコ拠点は少数精鋭体制で、チーフエンジニアを含むメンバーたちも2カ国の拠点を行き来する形になるとのことだ。
新鋭のスタートアップとは、多くの意味で対極にある日本の大企業。異質なもの同士が提携することで、新しい技術や、スピード感のある柔軟な働き方を取り込むことにつながる。さらに「日本のビジネスリーダーは、AI(人工知能)やIoT、ブロックチェーン技術など、レバレッジ効果が高い新技術を渇望しています」と話す。そのため日本企業は、オープンイノベーションの原理を加速度的に受け入れ始めている。
「スタートアップとのオープンイノベーションにより、企業は仕事のやり方を変え、組織のスピードを上げることができます」と井上氏。「一方で、日本進出を考える海外のスタートアップにとって、日本企業とのパートナーシップは、収益面や採用、日本独自のビジネスや消費者を理解する上で助けとなり、最も効率的なのです」
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:高野みどり 編集:田崎亮子)