楽天グループの民泊事業会社「楽天LIFULL STAY」と、エクスペディアグループで民泊サイトを運営する「ホームアウェイ」は今週、業務提携に合意した。楽天LIFULL STAYは、楽天と不動産情報サービス会社「LIFULL(ライフル)」が共同出資する会社の子会社。提携により、楽天LIFULL STAYはホームアウェイのプラットホームに日本の民泊物件を提供し、ホームアウェイはそのサイトを活用して訪日旅行者の増加を目指す。
プレスリリースによると、提携で目指すのは、大都市以外の目的地の知名度向上と観光客誘致だ。個人の所有する宿泊施設を、年間180日を限度に有料宿泊者に対し提供することを認める「住宅宿泊事業法」が、6月に成立したことに呼応したものだ。
日本には空き家が多い一方で、ホテルは不足している。訪日旅行者は急速に増えており、2016年には2400万人が日本を訪れ、政府は2020年までに4000万人に増加させる目標を立てている。日本ではまだ民泊はそれほど普及していないが、楽天LIFULL STAYやホームアウェイのように大都市以外の地域で一軒貸しを展開するサービスは、「STAY JAPAN(ステイジャパン)」など既に多く存在している。観光客の間では世界的に知られている「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、一軒貸しと部屋貸しに加え、さまざまな文化的体験も提供しているほか、他社が法律の成立を待つ間に、先んじてサービスを開始したという経緯がある。
楽天とホームアウェイがターゲットとするのは、ミレニアル世代や新しいもの好きの人たちに人気のAirbnbよりも、少し上の年齢層のようだ。ホームアウェイは、ホストと家を共用するのは必ずしも快適な休暇の過ごし方ではないことを、海外で実施した広告で面白おかしく描いている。ホームアウェイとの提携でどのような事業展開を意図しているのかというCampaignの問いに対し、楽天は今のところ明らかにしていない。
楽天にとってホームアウェイのブランドは、楽天やLIFULLよりもはるかに国際的に通用する。しかし訪日旅行者への働きかけは、業務の一部にすぎない。日本は空き家が多い割に、供給体制がまだ十分整っていないのだ。
Airbnbの仕事を担当したことがあるビーコン コミュニケーションズのエクゼクティブ・プランニング・ディレクターの小山聡介氏は、施設数の確保が課題だと指摘する。外国人への心地よいおもてなしという、日本人があまり得意としない面がホストに求められるためだ。とりわけ英語を話さないホストが、滞在者に快適なサービスを提供できれば、楽天とホームアウェイの提携は成功が見込めるという。また、フィンズベリー(PR会社)日本共同代表の成松恭多氏は、宿泊施設を供給する物件オーナーの多くは年齢層が高く、楽天というブランドは強くアピールするだろうと語る。
「この新たな試みが国内旅行分野にも参入していけるのか、興味のあるところです」と小山氏。まだ国内旅行の分野ではホテルや旅館の利用が一般的であり、民泊業者たちの参入への関心は高まる一方だろう。「日本の宿泊施設では一人当たりの料金設定が通例ですが、それとは異なってAirbnbや、おそらく楽天とホームアウェイの新事業もそうでしょうが、施設当たり一定の料金を設定する方法は魅力的だと思います」。日本ではこの料金システムはまだ、広く浸透するには至っていない。
「楽天トラベルは宿泊施設予約サイトとして既に名が通っており、国内旅行者用の民泊事業には参入しやすいかもしれません」と小山氏。だが、これは保証の限りではない。Airbnbは最近、日本で初めてのテレビCMキャンペーンを行い、顧客対象を広げる努力を開始している。物件の確保と需要喚起の双方において他社に抜きんでるには、ブランドの浸透と利用しやすさの二つが重要な要因となるだろう。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:田崎亮子)