COP27が閉幕した今、もはや誰の目にも明らかなように、気候科学と気候変動対策のあいだには大きなギャップが存在している。人類が知っていることと、行っていることのギャップだ。
率直に言おう。フレームワークを設定するのは政府かもしれないが、必要な変化を起こす(あるいは起こさない)のは企業であり、市民一人一人だ。
2022年、私たちは全世界で、北か南か、富裕層か貧困層かを問わず、予想外の異常気象が及ぼす被害を目の当たりにしてきた。異常気象は、安定した社会においてさえ、住居の喪失など、甚大な個人的、経済的損失をもたらす。ましてや不安定な社会においては、飢饉、無法状態、経済崩壊、大量移民問題など存亡の危機とも言える重大な影響を引き起こす。
だからこそ、我々は業界一丸となって、できるだけ早く気候と生物多様性に関する負の影響をゼロにする行動を起こし、社会に良い変化をもたらさなければならない。幸いにも、我々は何をすべきかをよく知っているのだから。
経済と社会と地球のため、また広告業界で働くすべての人のために、我々は今後2年間に実行すべきことに、緊急性と即時性を付加し、我々のアウトプットや働き方に本質的な変化を起こさなくてはならない。もはやサステナビリティ責任者や「グリーンチーム」だけが担当すべき課題ではない。役職を問わず、また広告エコシステムのどのポジションにあるかにもかかわらず、この業界で働くすべての人の責務だ。今年のあなたの行動が今後の未来を左右する。
アド・ネットゼロには、ビジョンと計画がある。ビジョンは広告業界を2030年までにゼロカーボンにする「all for none」であり、より良い選択、より良い製品、より良いサービス、つまり、より良い生き方のために、クリエイティビティと行動変容の総力を結集させるということだ。こうした成果を達成するため、我々は今すぐ本格的に取り掛からなくてはならない。アド・ネットゼロの計画にある5つのアクションポイントは、実践を重視し、誰もが次のステップにフォーカスできるように設定されている。
我々の業界は、広告の力を通じて、持続可能なイノベーションと新たな行動規範を社会に受容してもらうための極めて重要な役割を担えるかもしれない。しかし私は、それを過大評価はしていない。
我々は寛容になる必要がある。誰もが最初の一歩を踏み出さなければならないと知っている。完璧主義はむしろ変化の敵となる。個人の行動に完全な一貫性をもたせることは難しいが、できる限り正しい生き方に変えていく必要がある。そして、それはみな同じだ。現時点においては、正しい目的と、より正しい行動変容へといち早く導くことが、完璧な一貫性を求めるよりもずっと重要なのだ。
世論をリードするブランドの力を借り、人々の想像力を刺激して、一人一人に何ができるかを伝えよう。これは大きなビジネス機会であると同時に、かつてないほどの大きな変化を起こすチャンスでもある。
アド・ネットゼロが5つの行動指針を固める一方で、支援企業各社もプレコンペティティブ(非競争)領域でのベストプラクティスについての意見交換を行っている。
以下は、2023年にすぐ着手できる行動(すべてを網羅しているわけではないが、いずれもすぐに実行できる)リストだ。
1. 社内の状況を整理する
最初に行うべきことは、自社の電力を再生可能エネルギー100%の電力会社に切り替えることであり、これが2023年の必須条件だ。次に、日常業務のなかで常にサステナビリティを意識することを全社員に徹底させること、そしてすべての主要部門を巻き込み、炭素削減を念頭においた出張の方針も採用することだ。これらの目標の達成指標については、アド・ネットゼロ・ガイドで解説している。
2. アドグリーンのツールを用いて広告製品の脱炭素化を進め、この分野の専門性を高める研修に参加する
ツールを活用して排出量を分析することで、行動計画は改善され、コスト削減も達成できるはずだ。アドグリーンの初の年次レビューは2023年3月に発表される。このレビューでは、運用されている500以上の広告製品に対し、アドグリーンのツールを用いてCO2排出量を測定した結果が示される。これにより、排出削減の大きな可能性が明らかになるだろう。測定できていないものを管理することはできない。アドグリーンツールの利用徹底を製品チームと合意しておくことが重要だ。
誰もが知っている通り、何かを変えることは容易ではない。変化の必要性に対する認識と、変化を生み出すエネルギーが必要であり、知識と熱意どちらも欠かせない。次の2つの行動指針はその両方に役立つはずだ。
3. アド・ネットゼロ・トレーニングに参加するチームをバックアップする
トレーニングには、グリーンウォッシングに関する最新の留意事項の解説や、すべての広告で環境配慮のメッセージを正しく伝えるための方法論などが含まれている。
4. アド・ネットゼロ・グローバルサミットで制作されたコンテンツを活用し、アクションを加速させる
アド・ネットゼロのオンラインライブラリーにあるセッションを視聴して、これらについて同僚と議論し、同僚と協力して行動変容を促そう。アド・ネットゼロのサイトには、特定の職種に関連の高いセッションを見つけやすいようデザインされた「ブック・オブ・ザ・サミット」があり、とても便利だ。そして、最後になったが、おそらく最も重要なのが次の項目だ。
5. よりサステナブルな製品、サービス、行動を奨励し紹介するキャンペーンを積極的に展開する
汚染や浪費を無批判に推奨するシナリオやストーリーには、待ったをかけよう。そして最良の作品を今年のアド・ネットゼロ・アワードにエントリーしよう。エントリーの受付は2023年の春に始まる。昨年、2022年の受賞作からもインスピレーションが得られるだろう。
アド・ネットゼロは情報源のひとつであり、非競争的なコラボレーションだ。我々は業界のすべての企業、業界で働くすべての人を支援し、2023年をネットゼロの未来へと加速する年にしたいと考えている。
我々が今知っていることや、今学んでいることはすべて、ハブサイトであるadnetzero.comに掲載されている。ここからインスピレーションを得て、実践的活動について学び、我々の行動プログラムに従って上記5つを実践するならば、2023年には、業界のすべての人とすべての企業が、サステナブルな行動変容を推進し、排出量削減に対し大きな貢献を果たすことができるだろう。
さあ、いますぐ始めよう!
セバスチャン・マンデン氏は、アド・ネットゼロの議長。