(注)この原稿作成にあたって、筆者は時にAIを利用した。が、AIの答えがあまりに平々凡々だったため、落胆せざるを得なかったことを付記する。
バーンアウトに悩む人々の数は史上空前に上り、その解決策を検索する人は後を絶たない。ティックトックでのバーンアウトのハッシュタグ数は30億を超え、米調査会社「ワークプレイス・インテリジェンス」によると世界の労働人口の半数が疲弊し、ストレスを抱えているという。今ではバーンアウトは身体疾患として認知され、企業もより真剣に向き合うようになった。特にソーシャルメディア広告を扱う人々は、大小のトレンドやカルチャーの推移、新たなチャネルやフォーマットなど様々な要素を1日24時間フォローしなければならず、肉体的にも精神的にも大きな負担になっている。今や仕事のペースはとてつもなく速くなり、もはや誰もついて行けないのだ。
この稿ではAIがどのように我々の仕事を奪い、世の中を破壊していくか −− ではなく、どう活用すれば生産性を上げ、アルゴリズムによるバーンアウトから人々を守れるかについて述べたいと思う。私は、自動化できる単純労働がいまだにマニュアル化されていることを知ると怒りすら覚える。この数カ月で、新たにより利用価値の高いAIが登場した。だがこうしたAIがどのように我々の業務、特にアカウントマネジメント(顧客管理)をサポートしてくれるかについては、まだほとんど論じられていない。
先ごろ、世界経済フォーラムは週休3日制の効果に関する記事を発表した。広告業界では今もその実現性について議論が続いている。週休3日制の試験導入はまだ世界的レベルではないが、オーストラリアと日本、ニュージーランド、スペイン、米国、そして英国において企業レベル(日本マイクロソフトなど)と地域レベル(スペイン・バレンシア自治州)で実施された。その結果、どこの国でも従業員の生産性と幸福度が向上し、バーンアウトやストレスが軽減したことがわかった。
私は、仕事量を減らそうと主張するつもりはない。AIは退屈な単純作業をより効率的かつ安価にこなせ、それによって人間はAIにできない仕事 −− 信頼関係の構築や成長機会の分析、ユニークなクリエイティブソリューションの実現など −− に専念でき、勤務時間を有意義に使えると訴えたいのだ。我々の今の日常業務では、成長機会を生み出すクリエイティビティーや人間同士のコラボレーションに費やす時間があまりにも少ない。
また、「静かな退職(クワイエット・クイッティング)」の蔓延という課題もある。従業員が最低限の仕事しかせず、努力を怠り、早めに退社してしまう風潮だ。これは昨年話題を呼んだが、今ではさらに蔓延し、切迫した問題になっている。さらに、「錆つき(ラストアウト)」の問題もある。これは過重労働が原因ではないが、自己の能力が十分に活用されていない、仕事から良い刺激を受けないと感じる従業員を指す。従業員が目的意識とやる気を失えば、言うまでもなく生産性は徐々に低下する。単純作業の延々とした繰り返しがその主たる原因だろう。もしAIがこうした症状を少しでも緩和できるのなら、我々は再び従業員にやる気を取り戻させ、彼らのエンゲージメントを高めることができるのだ。
皆さんは、AIの活用法をどうお考えでしょう。下の「フィードバック」から、是非ご意見をお聞かせください。
(文:アレックス・ダルマン 翻訳・編集:水野龍哉)
アレックス・ダルマン氏はVCCPのマネージングパートナーと、ソーシャル及びイノベーション部門の責任者を務める。