中出氏はAKQAロンドンに16年間在籍、クリエイティブの責任者として世界の舞台で活躍した。今後はR/GA東京のECDとして、クリエイティブ部門を担っていく。
同氏の欧州における仕事歴は20年以上。長らくECDを務めたAKQAロンドンでは、フォーエバーマーク、VSCO、フォード、ブルガリ、ベライゾン、コテックス、無印良品、さらにはカテゴリーを超越したナイキのプロジェクト(『ジ・オリンピックス』や『グローバル・ナイキ・ウィメン』、『ナイキ・トレーニング・クラブ』、『ナイキ・ラン・クラブ』)など、最重要クライアントのクリエイティブを牽引した。
「これまで地球の反対側で、『異邦人』としての立場を享受してきました。おかげで、世界を違う視点から見られるようになった。欧州での20年間を経て、今の日本を違う視点から見られるか楽しみです」と同氏。
「ロンドンの文化は多様性があり、人々は常に変化を求めて自分の意見を率直かつオープンに語る。日本でも、自分がよく理解する文化に敬意を払いながら、オープンな議論を促していきたい」。概して今のテレビ番組は、「上から目線でフェイク」。「ブランドからのメッセージも大差がない。こうした側面は変えていかねばなりません」。自分が注力する要素としては、「仕事と人間、生活のクオリティー」を挙げる。
今は広告業界にとって難しい時期だ。コンサルティング会社やGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の参入、業務の国際化などで業界は大きな変革の最中にある。大手エージェンシーが苦慮する一方、機動性の高い中小エージェンシーはそれにうまく対応できていると言えよう。「幸い、R/GA東京は機動力のある小さなチーム。その仕事振りをチェックし、どうやって進化し、適応するか戦略を練るのはやり甲斐がある。このタイミングで日本に戻るのは、とてもエキサイティング。R/GAで働くのも然りで、とても楽しみにしています」。
R/GA東京の鈴木洋介MD(マネージングディレクター)は、「事業が成長するにつれ、中出氏がマネージメントに加わることはより大きなメリットになる」と話す。「2017年に東京事務所をスタートさせてから、我々は国内外のクライアントとの協働で飛躍的な成長を遂げた。競争の激しいこの業界で、彼の参加は我々の大きな強みになると確信しています」。
(文:ラウル・サチタナンド 翻訳・編集:水野龍哉)