調査では70%近くの回答者が、エージェンシーの選定で「贈収賄が大きな影響を及ぼしており、それを目の当たりにした」と答えた。さらに82%が、贈収賄の影響力について「信頼できる筋から間接的に話を聞いた」と回答。
ある者は、「贈収賄は『疫病』と同じ」と断じた。
調査には29名の人々が回答を寄せ、その結果は9月29日の本誌に掲載された。回答者の約3分の2はエージェンシー社員で、約15%がブランド、残りがメディアやプラットフォーム企業の社員。回答者はごく小人数で、業界の実態を的確に表しているとは言い難い。だが、贈収賄が深刻な問題であることは否定できないだろう。
回答者の85%は「贈収賄はAPAC全域における問題」と答え、ほぼ同数が「いま自分が働いている国で問題」と答えた。
「贈収賄が最も蔓延している国」として挙げられたのは、インド、中国、インドネシア、マレーシア、パキスタンだった。
ある者は、「中国では贈収賄が経済活動の一環と考えられている」と指摘。
「ピッチにおける贈収賄の効力は70%以上ある」と答えた者は29%。「50%以下」と答えた者は約3分の2だった。
何人もの回答者が、「独立系であれ大手であれ、複数の国々にネットワークを持つエージェンシーはどこも贈収賄を行っている」と言明。B2BやB2C、政府系機関などの様々なレベルのピッチ −− クリエイティブ、メディア、PR、制作など −− で横行しているという。
それでも、何人かの回答者は贈収賄を問題視していない。
ある者は「業界内で取り立てるほどの問題ではない」と述べ、「多くのエージェンシーの経営陣は贈収賄をビジネスの一環と見ており、支払うのは当然だと考えている。(クライアントに)リベートが払えない、あるいは仕事を失いたくないというエージェンシー社内の問題だ」
またある者は、「アジアにおけるこの問題は長年の慣行」と指摘。「ビジネス上の利益を生むため、長い歳月をかけて習慣的に繰り返されてきた。多くの人々はこの行為を本質的に贈収賄と見ていない。残念ながら、アジアの多くの国々では政治やビジネスなど社会のあらゆる側面で汚職が蔓延している。こうした慣行を完全に断つには、四半世紀以上かかるだろう」
またある者は、「贈収賄は我々のDNAに組み込まれている」とまでいう。
「世界がどのように機能しているか見てみればいい。贈収賄はあらゆる業界で蔓延している。事の発端はたいてい腐敗した政治家と、それに癒着したスポンサー。つまるところ、人間教育を根本的に変えなければ贈収賄は決してなくならない」
贈収賄をなくすには、「独立したピッチコンサルタントの役割が重要」という者もいた。
「公正なピッチを実現するには、真に独立したサードパーティーを起用し、初めから終わりまですべてのプロセスを委ねるしかない」
だが、こうした意見に懐疑的な者もいる。「ピッチに参加するエージェンシーは往々にして偏りがある。おそらく、地域にある中小のエージェンシーから賄賂を受け取っているのだろう」
(文:マシュー・ミラー 翻訳・編集:水野龍哉)