APAC市場は世界の広告費成長率を上回り、世界市場を牽引する役割を果たす −− マグナはレポートでこう記す。
メディアオーナー企業の広告収入は今年8420億ドル(約117兆9000億円)となり、前年比4.6%増と予測。
前回予測をやや下方修正したが、特定地域や業種、メディアの広告費は予想を上回る力強い成長を遂げ、欧米市場の減速を相殺するという。
APAC市場の成長率は7%で、世界平均の5%を凌駕。牽引するのはインドとパキスタン。両国は過去に12%という目覚ましい成長率を記録している。
主役は依然、デジタル
APACの成長を支えるのはデジタル広告で、中でもソーシャルメディアが12%、動画広告が11%と著しい伸びが予想される。
現在、デジタル広告費全体の47%を占める検索広告は9%の成長が見込まれ、eコマースとあわせて3000億ドルに。ソーシャルメディアも9.4%の成長で、双方がデジタル広告における主要フォーマットの役割を果たす。
モバイル広告も成長を牽引。無制限のデジタル予算(unlimited digital budget)では約84%を占め、2024年には86%になるとも。
メディアブランドAPACのリー・テリーCEOは、「APACのデジタル広告費は昨年大幅に減ったが、今年は2021年以前の水準に回復するだろう。成長率は高く、広告費で他のフォーマットを凌ぐ」と話す。
「中国では昨年、政府によるゼロコロナ政策などでデジタル広告費の成長率が鈍化した。今年は制約が緩和され、デジタルパブリッシャーにとっては大きなチャンスになる」
世界のデジタル広告売上高は8.5%増で5770億ドルとなり、全広告売上高の69%を占めると予測。eコマースやリテールメディア、そしてメディア消費習慣の変化やデータの精度向上などがその原動力になると読む。
従来型メディアは減少
従来型メディアの企業・ブランドは世界的に見て前途多難だ。広告収入は3%減となり、2640億ドルに。特にテレビ広告の落ち込みが目立ち、出版広告が4%減なのに対し、テレビは5%減。リニアTVの視聴者や主要な定期イベントの減少、広告料金の低迷などがその要因に挙げられる。
音声メディアは堅調だが、映画と印刷(雑誌・新聞にポスターやチラシ、DMなどを加えたもの)は減少。OOH(アウトオブホーム、屋外広告)は5%増で、コロナ禍以前の水準に戻る。コネクテッドTVのAVOD(広告付き動画配信)やアドレサブルリニア広告といった非従来型のデジタル広告も増加が予想される。
2024年の展望
来年は景気が安定し、主要な定期イベントも復活。広告費は6.1%の成長が見込まれる。北米・欧州市場もその恩恵を受け、APAC市場もインドや中国を筆頭に、引き続き成長を続けると予測する。
(文:Campaign Asia-Pacific編集部 翻訳・編集:水野龍哉)