「ビジュアル・ディスカバリー」プラットフォームのBlipparは、ライセンスモデルへの切り替えに伴い、日本オフィスを縮小する。ロンドンオフィスに在籍する広報担当、アシエ・カムシ氏によると、東京から完全撤退するのではなく、「規模を縮小し、今後も引き続きシンガポールオフィスで、日本やアジア地域のサポートを行っていく」という。何名のスタッフが日本オフィスに残るのかは、明らかにされていない。
約3年間に渡りBlippar Japanの代表取締役社長を務めたショーン・ニコルス氏は、自身の辞任を認めるメールの中で、ビジネスモデルの変更により現地オフィスを置く必要がなくなったと述べている。日本オフィスのスタッフ数はフルタイムとパートタイムを併せて20名だった。
ニコルス氏はメールで、今回の判断は「決して技術上の脆弱性が原因ではない」と強調。「Blipparはこれからも最高水準の研究開発を続け、拡張現実(AR)分野における持続可能なテクノロジーを維持します」と述べた。日本のブランドやデベロッパーは、同社のプラットフォームを引き続き無料で使用することができる。Blipparが言うところの「拡張現実(AR)の民主化」の一環だ。ニコルス氏は今回の方針転換を「拡張現実(AR)の可能性を確信している」主体に、直接テクノロジーを委ねることを目指すものだと説明している。
Blippar Japanが正式に開設されたのは昨年だが、日本では拡張現実(AR)に対するマーケターの反応は鈍かった。これは、ニコルス氏も昨年のインタビューで認めているところだ。8月にはポケモンGOが日本に上陸し、Blipparが「8歳の子どもと同等の知能レベルで検索、認識できるシステム」とする同社のテクノロジーや、同社そのものに対する期待感が高まった。
シーバスリーガルやコカ・コーラをはじめとする多くのブランドが、ここ数カ月の間にBlipparの利用を試みており、成果は各社各様だったようだ。業界関係者は、Blipparのプラットフォームは日本での知名度が低く、使用に際してユーザーがアプリのダウンロードをしなければならないため、「blip(ピッと参照)」されたいブランドの思いとは裏腹に、普及が進んでいないと指摘する。
Blipparは2011年に英国ロンドンで設立され、米国、シンガポール、インド、トルコ、日本にオフィスを構えている。ニコルス氏は2014年にBlipparに参画するまで、電通や博報堂を含むさまざまな広告会社で経験を積んできた。同氏は、Blippar Japanの代表取締役社長を辞任した後も日本に残り、デジタル分野で仕事を続けると表明している。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)