5月27日、CCCの東京本社で開かれた記者会見で両社のパートナーシップ締結が発表され、サンフランシスコを拠点とするAirbnbのブランド認知度を、今後CCCが日本で高めていくこととなった。
記者会見の席上、Airbnbの共同創設者兼CPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)であるジョー・ゲビア氏は、同社が「日本におけるCCCの顧客ベースを活用し、特に地方再生を見据えてホームシェアリングを発展させていくコンテンツとサービスの制作・提供を共同で行う」と述べた。同氏が公式の場で記者発表とプレゼンテーションを行うのは、日本では初めて。
TSUTAYAチェーンを保有するCCCは、1983年に書店として大阪で創業。日本にビデオやCDレンタルのコンセプトを導入し、直営店やフランチャイズを拡大していった。現在では共通ポイントサービスである「Tポイントカード」から、「T-SITE」のようなハイエンドのライフスタイルを提案する複合施設まで幅広い事業を展開し、他の多くの小売業者とパートナー関係を築いている。
今回の提携に際し、CCCの旗艦店である東京・代官山のT-SITEでプロモーションが行われ、店舗全体を使ったAirbnbのブランディング、日本の「おもてなし」や旅行に関する書籍コーナーの設置、エアストリーム(キャンピング用トレーラー)を使ったAirbnbのサービスの紹介などが行われた。
今後は渋谷のスクランブル交差点に面した大型店「渋谷TSUTAYA」でのプロモーション、ホームシェアリングへの理解を広めるため共同で制作するウェブサイトの公開、新しくAirbnbにホスト登録をした人々へのTポイント・キャンペーンなどが行われる予定だ。
AirbnbとCCCはこれまで、湘南T-SITEに一泊できる「Night At」というプロモーション・イベントをコラボレーションしたことがある。
では、CCCにとって今回の締結はどのようなメリットがあるのだろうか。
簡潔に述べるなら、日本への観光客の増加はCCCやその提携店にとって売上の増加に直結する可能性が高い。
記者会見で増田氏は、CCCが行った調査でAirbnbの日本での認知度はわずか15.9%、実際の利用者は1.6%に過ぎないと述べた。
Airbnbにとって日本は最重要マーケットの一つであり、重点的にキャンペーンを行っている世界の三大都市の一つが東京であるにもかかわらず、こうした結果なのである。
日本を訪れる旅行者の数は着実に伸びており(今年の4月だけで訪日客は200万人以上)、Airbnbのホストとして宿泊サービスを提供する人々が増えれば、日本にはより一層の恩恵があると増田氏は述べる。必然的に、ホームシェアリングの本義的な理解をより浸透させることが大切になってくるのだ。
「ホームシェアリングの真髄は、まだ十分に理解されていません。ホームシェアリングは単なる部屋の貸し借りではなく、純粋なおもてなしの心を具現化することなのです」と増田氏。
日本でリストアップされているAirbnbの宿泊施設の多くは、ホストの住居の一角にある手入れの行き届いた部屋ではなく、アパートの空き部屋や空き物件をそのまま貸すものであり、それらも大都市に集中している。
「コンセプトをより正確に理解してもらうためには、Airbnbが多くのプロモーションや違った角度からのマーケティング活動を行っていく必要がある。テレビCMでは理解されないのです。皆さんにはまず体験していただくことが重要で、Airbnbが今後展開を推し進める中で、その手立てをじっくりと考えていきたい」
日本への観光客が増えれば、CCCとTポイントの提携店にも結果的に利をもたらすと見る増田氏。
「我が社は200人のフランチャイズ・オーナーを有し、Tカードでは100社の企業と提携しています。外国人観光客の誘致は非常に重要。ライフスタイルとしての旅を提案し、日本ならではのホームシェアリングを広めていきたい。Airbnbの事業が発展すれば、CCCの利益にもなるのです」
小売り業やレンタル事業が伸び悩む中、CCCは社会インフラの開発にも熱心で、自らを「カルチュア・インフラ・カンパニー」と呼んでいる。こうした方向性に基づき、成長を続けるホームシェアリング・ビジネスとの提携は極めて有意義であり、両社は同じ価値観を共有しているとも言う。
日本ではホームシェアリングは今も法的課題に直面しており、ブランドとしての関与はCCCにとって一定のリスクをともなう。だが同時に、先見性に富んだ企業という位置付けにも役立つ。この点については増田氏は楽観的で、最終的には法改正が行われ、ホームシェアリングは一般的なサービスとして確立していくだろうと述べる。
同氏は今のAirbnbの立ち位置を、起業家としての自分の過去の経験と重ね合わせる。
「我々がCDレンタル事業を始めたときも、違法行為だという意見が多く出ました。その後法律が改正され、理にかなったビジネスと見なされるようになった。ですから現行の法律だけを尺度にして、Airbnbの価値を評価するべきではないのです」
(編集:水野龍哉)