ChatGPT(チャットGPT)の開発元であるOpenAIは、そのチャットボットの学習データセットから、著作権保護されたコンテンツを削除するのではなく、顧客が著作権侵害で訴えられた場合には、その訴訟費用を負担すると約束した。
OpenAIのCEOサム・アルトマン氏は、11月6日、サンフランシスコで初開催された同社の開発者向けカンファレンスでこの発表を行った。同カンファレンスには世界中の開発者約900人が参加した。
カンファレンスでのスピーチで、アルトマン氏は次のように述べた。「著作権侵害に関する訴訟に直面した場合、我々はお客様を守り、発生した費用を支払うことができます。これはChatGPT Enterprise(チャットGPTエンタープライズ)およびAPIの両方に適用されます」
企業向けの生成AIサービスChatGPT Enterpriseの利用者やChatGPTのアプリケーションプログラミングインターフェース(API)を利用している開発者は、OpenAIが「著作権の盾」と呼ぶ訴訟費用の支払いオファーの対象となる。ただし、このオファーはChatGPTやChatGPT+の無料版の利用者には適用されない。
さらに、アルトマン氏は今月末に公開予定のChatGPTアプリストアについて公表し、そこでは、独自開発したChatGPTボットを公開でき、開発者は対価を得られるようになると語った。また彼は、以前のChatGPTバージョンよりも遥かに長いプロンプト入力を受け付けることができ、2023年4月までの世界の知識を有するChatGPTの最新版、「GPT-4 Turbo」を発表した。ただし、OpenAIは「GPT-4 Turbo」がプレビューを終了し、商業利用が可能になる時期については明らかにしていない。
2022年11月に一般公開されて以来、ChatGPTは爆発的な成長を遂げ、現在約1億8050万のユーザーに利用されている。ChatGPTのウェブサイトは、2023年9月だけでなんと15億回以上の訪問を集めている。だが、ChatGPTの開発元であるOpenAIには著作権に関する複数の訴訟も起きている。
実際、生成AIは著作権訴訟において一種の泥沼と化している。ChatGPTのようなツールは、書籍、記事、ウェブページなどから収集された、莫大な量のテキストデータを使用してトレーニングされる。事実や発見、著作権保護期間が切れた作品などの公共ドメインに属する文章を除けば、ChatGPTのトレーニングで使用される素材の大部分は、間違いなく著作権が保護されたものだ。
ジョン・グリシャム氏、ジョナサン・フランゼン氏、ジョージ・ソーンダーズ氏、ジョディ・ピコー氏、そして『ゲーム・オブ・スローンズ(略称GOT)』の著者であるジョージ・R・R・マーティン氏などの著名な作家たちは、ChatGPTの公開以来、少なくとも3回以上、チャットボットの学習に自身の著作物が利用されているとして、OpenAIを訴えている。
ロイターの報道によると、著作家たちは9月の裁判の訴状で、マイクロソフトが支援するOpenAIが、彼らの著作物を複製し、それを元にAIをトレーニングし、文章をリライトする行為は米国法に違反していると主張している。
著作家たちは、「OpenAIは明らかに、自分たちに都合の良いように米国の著作権法を一方的に書き換える意図を示し始めている」と述べた
OpenAIやその他のAI関連被告企業は、インターネットから収集したトレーニングデータの使用は、米国の著作権法における公正な利用要件を満たしていると主張している。