今年は東京五輪・パラリンピック大会やサッカー欧州選手権といった世界的イベントが開かれ、インドでは広告費の高い成長が見込まれる。それでもDANは、アジア太平洋地域における広告費成長率予測を前回(2019年6月)から0.7%下げ、4.2%とした。中国やインドネシア、ベトナム、シンガポール、タイなどで成長が鈍化するとみる。
中国の成長率は、前回の6.9%から5.6%に修正された。近年の中国は小売販売や工業生産とともに経済成長も鈍化し、広告費に影響を与えている。この傾向は2021年も続く見込みだ。
2020年の全世界における広告費成長率予測は3.9%で、総額6154億米ドル。2019年の成長率である2.6%を上回った。
インドネシアやベトナム、シンガポール、タイといった東南アジア諸国も中国同様、成長率が鈍る。北東アジアも似た状況で、韓国は前回予測から半減して2.3%。昨年、困難に直面した香港は2019年の予測が2018年の10.9%減だった。
今回の新規予測は59カ国・地域から収集したデータに基づいたもの。それでもDANは、アジアが世界最大の成長市場とみなす。中国が伸び悩む一方、インドはますます躍進。2020年は10.9%、2021年は12%と二桁の成長を見込む。スマートフォンが急速に普及して大きなブームとなり、モバイル革命が起きていることがその背景にある。
フィリピン(4.7%)とマレーシア(0.7%)は予測を上回る成長。特にマレーシアの明るい経済見通しは、広告主を積極的にしているという。
デジタル広告は高い成長を続け、アジア太平洋はこの分野の最も先進的な地域としてそれを牽引していく。アジアの広告費全体に占めるデジタル広告の割合は51%強。中国(67.7%)、香港(60.1%)、豪州(55.8%)、ニュージーランド(54.7%)などが高い比率を占める。
「現在の世界最大のスマホ市場は中国。次いで、2018年に米国を追い越したインドです。市場の成熟につれ、モバイルと従来型メディアとを組み合わせた広告施策やソリューションが成長の鍵になっていくでしょう」とDANアジア太平洋地域CEOのアシシ・バシン氏は述べている。
(翻訳・編集:水野龍哉)