DANの今年度第2四半期の収益は15〜20%減となる見通しだ。これは決して「最悪の数字」ではなく、明るい兆候も示す。
同社で長年CFO(チーフ・フィナンシャル・オフィサー)を務めるニック・プライデー氏は、「6月の業績は4・5月同様、極端な落ち込みはなさそう。コロナ危機の影響で、第2四半期がオーガニック成長率の底値になるだろう」と語った。
コロナ禍が第2四半期に与える影響に関し、同氏の発言は「ビッグ6(世界6大エージェンシー)」の中でこれまでのところ最も明快なものだ。
バークレイズやUBSといった世界の主要投資銀行のアナリストは、「WPPなど主要エージェンシーの持株会社は第2四半期の収益減が25%に及ぶ可能性がある」と4月末に述べた。
またWPPも同月、可能性は極めて低いとしながらも、「最悪のシナリオとして売上総利益が35%減になることもあり得る」と年次報告書で発表した。
こうした数字に比べると、プライデー氏の予測はそれほど悲観的ではないだろう。それでも、「今年後半のV字回復は期待していない」という。
電通グループの株価は来年の利益が改善するとの期待から、大幅に上昇した。
海外事業は大幅なコスト削減
ロンドンに本社を置くDANは、昨年12月に事業簡素化のための構造計画を発表。第1四半期連結決算では初めてクリエイティブ、メディア、CRM(顧客関係管理)という3つの事業ライン別のオーガニック成長率を公表した。
それによるとCRMは3.9%増、メディアは5.9%減、クリエイティブは6.5%減。全体では3.3%減となった。
CRMで中心的な役割を果たすマークル社にとっては、「(ひと桁後半の成長を維持し)記録的な四半期となった」(プライデー氏)。「安定した複数年の契約を多くのクライアントと結んでいるので、業績は堅調だろうと予測していました」。
どの事業もコロナ禍の影響を受けたが、「マークル社は引き続き、クリエイティブやメディア分野よりも良い結果を出すでしょう」。
DANが各事業の業績を公表するのは特筆すべきことだ。他のほとんどの主要グループは全体の数字を発表するだけで、メディアやクリエイティブなど個別の業績は分からない。
コロナ禍の影響から、電通グループは国内外の事業で7%のコスト削減を打ち出した。プライデー氏は具体的な数字には言及しなかったが、国外での削減額は「国内よりも若干多い」という。
事業構造計画では、2020年と2021年に4500万ポンド(約63億円)ずつのコスト削減を予定している。
電通グループは、DDB(オムニコムグループ)のグローバルCEOを務めていたウェンディ・クラーク氏をDANのグローバルCEOに抜擢。同氏は9月よりDANの一員となる。
(文:ギデオン・スパニエ 翻訳・編集:水野龍哉)