SK-IIは、ピテラに全情熱を傾けていると言っても過言ではない。SK-IIのすべての関連製品、マーケティング資料、ウェブサイト(ピテラTV)には、特許を取得し商標登録されたビタミンとアミノ酸を含むコメ発酵成分であるピテラが、すべて大文字で「PITERA™」と強調され表示されている(日本サイトでは「ピテラ™」、本記事では「ピテラ」と表記している)。そのため、日本のブランドSK-IIが、昨年「ワールドピテラデー」を宣言したときも、意外に思う人はほとんどいなかった。
では、この世界的ブランドSK-IIが、この主力製品をさらに盛り上げ、トップに立ち続けるにはどうしたら良いだろうか?そのひとつが、キャンペーンのレベルをさらに一段上げて「ワールドピテラマンス」を宣言することだった。しかし、イベントにはその幕開けを飾る中心的な存在が必要だ。SK-IIは、ヘルス&ビューティーブランドでは一般的なマーケティング手法である、単独のポップアップイベントを選んだが、その規模は桁違いだった。
数週間前、SK-IIはブランド名(の由来であるSecret Key II)にインスパイアされた初の展示会「シークレットキーハウス」を東京・表参道で開催した。建築的にも印象的なこの展示は、渋谷STANDBYの BA-TSU ART GALLERYにて、7月29日~30日の週末だけ設置された。
また、SK-IIのグローバル・セレブリティ・アンバサダーである日本の女優、綾瀬はるか、中国の受賞女優、タン・ウェイ、そして世界的ガールズグループTwiceのミナが、オープンを記念して招かれ、一般の人々と交流した。
特筆すべきは、SK-IIのグローバルCEOが、インタビューの機会を設け、そのマーケティング施策について語ってくれたことだ。それは、CEOが優れたマーケティング・キャンペーンに何を求めているのか、このようなポップアップイベントに投資する価値をどう感じているのかを知る貴重な機会となった。私は、ブランド課題だけではなく、AIの活用についても聞いてみたかった。
以下は、スーキョン・リー氏とCampaignのやりとりだ。分かりやすいように簡潔に編集されている。
シークレットキーハウスの着想とアイデア、そしてそれを支持する理由は何ですか?
シークレットキーハウスの発想の原点は、ブランドの核となる、SK-II独自の象徴的な成分、ピテラにあります。SK-IIがピテラとともに誕生したことは、ご存知の方も多いでしょう。酒蔵での偶然の出会いから、研究者グループは、熟練の酒造家の手が発酵の過程で非常に柔らかく、若々しくなることを発見しました。長年の研究の末、研究者たちはその秘密を握る1つの酵母株を突き止めたのです。
こうして誕生したピテラは、40年以上もの間、基本的に変わることなく使用されています。ピテラの肌への驚異は今も続いています。私たちが発見したことは、ピテラより優れたものは、さらに多くのピテラだけだということです。昨年、私たちはSK-II初の「ワールドピテラデー」を迎え、消費者、メディア、インフルエンサーなどにピテラの全貌を伝え始めました。ピテラの検索数は2桁増加し、SK-IIに対する好意的な投稿も2倍以上になるなど、大きな反響を得ることができました。
そこで今年は、スキンケアの専門知識と製品のものづくりへのこだわりに対するSK-IIの深いコミットメントの象徴として、これをワールドピテラマンスに拡大し、消費者とファンにSK-IIの隠された秘密を解き明かす鍵を手渡したいと考えたのです。
チーフマーケターから提示されたマーケティング施策の中から、どのようなタイプのものを支持し、CEOとして、どのように決定したのですか?
最優先事項は、消費者がすべての活動の中心だということです。そのキャンペーンは、消費者を深く理解した上で、消費者の欲求と願望を満たしているだろうか?オムニチャネルのすべてのタッチポイントで、消費者へのサービス水準を高め、抗しがたいほど魅力的なブランド体験と製品イノベーションを提供できているだろうか?そして、もうひとつはピテラです。そのキャンペーンやイノベーションは、ピテラの魅力や優位性を高めているだろうか?ピテラについて力強く、本物のストーリーを伝えられているだろうか?
シークレットキーキャンペーンとシークレットキーハウスは、SK-IIが消費者に提供しようと努めているユニークな体験の一例です。
このような、一般消費者がこの週末にたった一度しか見ることができないような、高価なイベント施策の投資対効果をどう評価していますか?また、ビューティーブランドがキャンペーンの中でも特にポップアップイベントを好むのは、消費者と直接関わることができるからでしょうか?
今日の世界や、消費者が毎日見たりスクロールしたりしているコンテンツを見れば、それらはみんなストーリーに溢れています。ティックトックからインスタグラム、ドウイン(中国版TikTok)、小紅書に至るまで、消費者の心をとらえているのは力強くて本物のストーリーです。
SK-IIには、力強い本物のストーリーがあります。私たちは、この本物のストーリーを通じて消費者とつながる有意義な方法を常に模索しています。それはまた、消費者もまた自分自身のストーリーを語りたがっていることを理解することにつながっています。彼女らも、ストーリーを消費するのと同じプラットフォームで、自分自身のストーリーを語る体験を求めているのです。
シークレットキーハウスでは、ユニークな体験を通して、肌が変わっていくストーリーを伝えるプラットフォームを提供したいと考えています。そのすべてのタッチポイントで、思い出に残る、やりがいのある体験を提供するのです。
今年は、多くの消費者がSK-IIのカウンターに戻ってきて、シークレットキーキャンペーンやシークレットキーハウスの立ち上げについて尋ねていきました。彼女らの多くが、私たちのソーシャルメディアに参加して、このイベント体験や製品について語っています。
競争の激しいグローバルなビューティ市場において、SK-IIが今直面している最大のブランド課題とチャンスは何ですか?
消費者は、私たちがブランドとして行うすべてのことの中心にあります。私たちは、誰よりも消費者を理解し、誰よりもサービス向上を追求し、その上で、すべてのオムニチャネルのすべてのタッチポイントで、それをシームレスに行う必要があります。
私たちは今、オムニチャネルの世界に生きているのです。そしてこれが私たちと消費者の現実なのです。私たちが調査中に消費者に話を聞いたとき、「オンラインで過ごす時間とオフラインで過ごす時間は、それぞれどのくらいですか」と質問したのですが、それに誰も答えられなかったのです!彼らはこう尋いてきました。「それはどういう意味でしょう?お店でお買い物しながら、SNSでチェックしているときは、それはオフラインでしょうか、オンラインでしょうか?」と。
これはSK-IIにとって何を意味するのでしょうか?それは、彼女たちがどこで見て、どこで買い物をしていたとしても、私たちは常にサービス水準を引き上げ、存在感を示さなければならないということです。店頭であれ、ソーシャルメディアであれ、アットコスメ、小紅書、ドウイン、ティックトックのような商品レビューサイトであれ、彼女たちがどこで見るにせよ、常にナンバーワンブランドでなければならないということです。彼女たちにとって最も関連性の高いコンテンツと総合的な価値を提供することで、オフラインでもオンラインでもシームレスに対応しなければならないのです。
トップビューティーブランドの多くは、それぞれの美容ニーズを持つ消費者のために、製品やサービスをパーソナライズするAIやテクノロジーを活用しています。SK-IIにとって、この分野はどのくらい重要でしょうか?この分野におけるSK-IIの落とし穴とチャンスは何でしょうか?
パーソナライゼーションはSK-IIにとっても極めて重要です。消費者のブランドに対する期待はますます高まっています。世界的に有名なスキンケアブランドとして、SK-IIの特徴であるスキンケアの専門家による「おもてなしサービス」を、すべてのサービスや体験にまで広げ、消費者の期待をはるかに越えるサービスを提供しなければならないのです。
テクノロジーは、オンラインと同様、オフラインでも消費者体験を向上させる重要な手段です。その一例として、消費者が自分の肌をよりよく理解するための最新の肌分析ツール「マジックスキャン」があります。これは、最先端の顔認識技術やコンピュータビジョンとAI技術を組み合わせており、世界中の120万人以上の女性の肌データベースと照らし合わせて、肌の状態を評価します。肌年齢や肌の長所を明らかにして、その肌のもつ潜在力を予測するのです。
マジックスキャンは、すべての市場で圧倒的な好評を博しています。消費者は、自分の肌の状態や可能性について思いもよらない結果を知ることができて良かったと評価しています。私たちは、肌に関する科学的知見に基づいて、マジックスキャンの新しい機能を開発し続けており、新しいアンチエイジングクリームの発売に合わせて、世界初の肌老化測定機能を搭載したマジックスキャンを展開しました。