これと言って特徴のない、どれも似たり寄ったりのクルマを製造する自動車メーカー。では、どのようなプロモーションをすれば話題作りができるのか −− そんな模範例を日産自動車が示した。答えは、決してクルマをフィーチュアする必要はないということだ。
同社が今回「主役」に抜擢したのは、2016年に開発した「インテリジェントパーキングチェア」を日本の“おもてなし文化”に応用した「セルフパーキングスリッパ」。
このハイテクな履物は、名付けて「ProPILOT (プロパイロット)Park RYOKAN」(箱根の老舗旅館『一の湯本館』が協力)に実際に用意される。スリッパには自動駐車技術「プロパイロット」が用いられ、ゲストを迎えるために「自ら」が旅館の玄関先に「駐車」するという仕掛けだ。
更に部屋でも、同じ技術を備えた座布団やテーブルなどが自ら「整列」。日産の電気自動車「リーフ」が自動駐車のために搭載するセンサーやカメラを駆使した技術で、自社テクノロジーをエンターテインメント風にアピールする。
日産はこの旅館に2名1組を1泊招待するキャンペーンを開始。応募者は「#PPP旅館」「#wanttostay」とハッシュタグをつけ、自身のツイッターアカウントから2月10日までに投稿することが必要。
Campaignの視点:
確かにこのアイデアは、クルマが山道を走ったり自動駐車をしたりする映像を見せられるよりもずっと面白い。日本の代名詞となった「おもてなし」と絡めるのも賢明であり、意外性もある(ちなみに日経ビジネスオンラインが、おもてなしの効果に新たな記事で疑問を投げかけている)。
ただ我々の疑問は、たとえ短期間であっても、なぜ旅館を通常の顧客に先着順で開放しないのかということだ。消費者に1度きりのチャンスを与えるよりも、できるだけ多くの人々に体験してもらう方がプロモーションとして効果的ではないだろうか。このままでは、「次のテクノロジーを日産はどこに仕掛けるのだろう」という憶測を人々に呼ぶだけだと思うのだが……。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)