Arvind Hickman
2022年12月09日

ツイッターへの出稿、相次ぐ停止:ブランド毀損の懸念高まる

イーロン・マスク氏の行動や、コンテンツ・モデレーション(投稿監視)のリソース減は、広告主をツイッターから遠ざけていると、エージェンシー幹部らは警告している。

ツイッターへの出稿、相次ぐ停止:ブランド毀損の懸念高まる

広告主やエージェンシーのあいだで、ツイッターへの出稿を停止する動きが広まっている。ツイッターの新しいオーナーとなったマスク氏の下で、ブランドセーフティやモデレーションに関する懸念が高まっているためだ。

エージェンシーの幹部らは、ツイッターのモデレーションに関する動きや、新たにオーナー兼CEOとなったマスク氏の「予測不能な行動」に対し、懸念を吐露している。

Campaign の調査では、IPGメディアブランズやオムニコム・メディアグループなど、複数のエージェンシーグループが、ブランドセーフティが保証できないとして、ブランドにツイッターの利用を控えるよう助言していた。また、フィナンシャルタイムズのリポートによれば、グループエムなどはツイッターへの広告出稿を「ハイリスク」と評価しているという。

大手広告主が、ツイッターへの広告出稿を相次ぎ停止したため、マスク氏はブランド各社のCEOに直接電話をかけて、彼らに非難を浴びせていると、複数のメディアが報じている。

エージェンシー幹部やメディア担当者の多くは、ツイッターが大混乱の時期にあり、状況が刻々と変化していることから、匿名を条件にCampaign の取材に応じてくれた。

広告主たちがツイッターに対して懸念しているのは、モデレーションへの対応や従業員の一斉流出、そして無神経なツイートや陰謀論をシェアするといったマスク氏自身の行動だと、あるメディアエージェンシー幹部は語った。マスク氏は、ドナルド・トランプ前米大統領やカニエ・ウェスト氏など、過去に物議を醸した人物のツイッターアカウントを復活させている。

「彼(マスク氏)は、ミームも含めてさまざまな投稿をしており、その中にはかなりひどいものもある」と、あるエージェンシー幹部は指摘した。「マスク氏とツイッターにとって今必要なのは、ツイッターが広告主にとって安全な環境であることを証明することだ。しかし今のところ、そのような動きは見られない」

また、営業チームやコンテンツモデレーションチームなどの、スタッフの大量離脱を懸念しているメディアエージェンシー幹部もいる。

ツイッターUKでは最近、マネージングディレクターを務めていたダラ・ナスル氏と、プランニングを統括していたデイヴィッド・ウィルディング氏が退職した。この2人はどちらも、「優れた」職場文化や受賞歴のある営業チームを醸成したとして、業界でも高く評価されていた人物だ。

ツイッターUKには、営業とサポートのスタッフが合わせて80名いたが、Campaign が確認したところ、そのうち退職したのは15%程度にとどまっているようだ。

米国の非営利団体メディア・マターズ・フォー・アメリカが、11月22日に報じたところによれば、ツイッターに出稿していた上位100社の広告主のうち、50社がツイッターへの出稿を停止したという。彼らが2022年に費やした広告費は、合わせて7億5000万ドル(約1030億円)に上る。また、ツイッターへの支出を減らした広告主も数社あるという。

広告出稿を停止した有名ブランドには、フォルクスワーゲン、ゼネラルモーターズ(GM)、フォードモーター、ディアジオ(英国の酒造会社)、ハイネケン、ネスレ、コカ・コーラ、マース(米国の食品会社)などがある。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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