トップアスリートがときに、そっとしてほしいと思うのは無理のないことだ。大坂なおみ選手は現在放送中のナイキのCMで、記者から投げかけられる質問(ばかげた内容のものも多い)を控えるよう求める。
大阪選手は1日(土)、全仏オープンでカテリーナ・シニアコバ選手(チェコ)に完敗。トップシード選手としての重圧も一因だと語った。
しかしメディアの関心は、スポーツのパフォーマンスとは無関係のこと(日本人とハイチ人の間に生まれた自身のアイデンティティー、日本語力、好きな食べ物、その他さまざまな奇問)に集中しがちだ。ナイキのCMは、同選手がこれらの質問に疲弊していることを示唆している。記者からの質問攻めに対し、彼女は「シーッ!」と静かにするよう求めるのだ。
添えられたキャッチフレーズは「世界を変える。自分を変えずに。」だ。
大坂選手はこれまでアディダスと契約してきたが、今年4月からナイキと契約。ナイキは通常、他スポンサーのロゴを着けることは認めていないが、大坂選手については特例として、今後も日清食品や全日空のロゴを着けることが認められる。
大坂選手は現在、マスターカード、日産自動車、資生堂など、合計7社とスポンサー契約を結んでいる。アネッサ(資生堂の日焼け止め)の最近のキャンペーンでは、日ごろから過酷な紫外線を浴びながらトレーニングや試合に臨むにあたり、同製品は「スポーツにぴったり」だと訴求する。
Campaignの視点:
ナイキのCMは、シンプルで的を射ており、効果的で、セリフを用いずとも大坂選手のパーソナリティをリアルに描き出している。あらかじめ用意された原稿を読み上げたような、彼女らしさが全く伝わってこないアネッサのCMとは対照が際立つ。
アスリートは、「スポーツの選手」として以上の大きな意味を持つ(好むと好まざるとにかかわらず)。深く心を揺さぶる広告が印象に残るという点も、変わることがない。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)