社会学者たちは最近、世代ごとのレッテルを廃止するよう主張している。
メリーランド大学の社会学者であるフィリップ・コーエン氏は、2021年にピュー・リサーチ・センターに「正しいことをしよう」と持ちかけ、レポートで世代別のレッテルを使うのをやめさせた。約170人の社会学研究者がコーエン氏の書簡に署名し、このような区分は恣意的で、科学的根拠も欠いており、混乱を招くだけだ、「もう茶番は終わらせるべき」と主張したのだ。
現代では、現実的な意味でも、世代別のレッテルはあまり意味をなさないものになっている。その要因のひとつは、親になる平均年齢が着実に上昇しており、次の世代の期間が長くなっているということだ。しかし実際には、X世代、ミレニアル世代、Z世代の対象期間は、団塊世代やサイレント世代(各18年、17年)よりもスパンが短く(15年)なっている。
その上、こうしたレッテルと、その世代に属する人々との関係も徐々に希薄になってきている。Z世代で、自分たちの世代に付けられた呼称を認識していると答えた人はわずか39%だ。それに対し、団塊世代では74%、X世代では53%、ミレニアル世代では45%の人が知っていると答えている。
コーエン氏からの苦言と社会的批判の高まりを受けて、ピュー・リサーチ・センターは今年5月、ついに世代別レッテルの使用を終了させた。だが、世代研究のあり方や若者文化をめぐるさまざまな論調を変えるという意味では、これは長い道のりの最初の一歩にすぎない。
世代に付けられたレッテルによって、どんな問題が起こるのだろうか?
その弊害のひとつは、若者文化が過度に強調され、持ち上げられることによる歪みだ。
現代の若者には、「貴重な青春」が過ぎ去ってしまう前に、何か大きなことを成し遂げなければならないという大きなプレッシャーがのしかかっている。フォーブス誌の「30歳以下の30人」に選ばれたメンバーには犯罪歴がつきまとい、新進気鋭の若手クリエイターは燃え尽き症候群に見舞われている。若者特有の長所を強調しすぎることは、むしろ有害になりつつあるのだ。
また、若さへの憧れは、常に美容業界の核心だった。しかし、ソーシャルフィルターの登場によって、それがどんどん過激になってきた。特にTikTokの最新アンチエイジングフィルターは、人々の間に強迫観念さえも生み出しつつある。
老化に対するZ世代の反応は、ミームカルチャーにも端的に表れている。年を取ったと感じた瞬間を表現するミーム(グループ内で最年長になった、20代後半になってお酒が必要になった、など)が何十パターンもアップされており、今日の若者の自虐的な不安心理を反映している。もっとも、その不安感も理由のないものではない。彼らは、過去の文化的トレンドにおいて、上の世代がいかに切り捨てられ、無用扱いされてきたかを目の当たりにしている。自分たちにも同じことが起きるだろうという、避けがたい恐怖が芽生えるのも当然だろう。
ミレニアル世代は、最年少であればまだ30歳を迎えたばかりだ。だが、まだ完全に成熟する前に、資本主義主導の「次は何?」という強迫観念のために、文化的時流から切り捨てられた。そして彼らは、絶え間ない危機の中で大人になったため、持ち家や子育てのような伝統的な「大人」の階段を上る機会さえまだない人も多い。つまり、ミレニアル世代の多くは、若いZ世代と同じように自己発見と変化の途上にあるのだ。
では、何ができるだろうか?
ひとつは、世代研究や若者文化の考察において、もっとニュアンスを大切にするということだ。
どんな世代の集団も、どんな属性の集団も、決して一枚岩ではない。集団内部におけるニュアンスの違いを認識することが重要だ。確かにZ世代は、インターネットとともに成長し、TikTokの主要ユーザー層なのかもしれない。しかし、彼ら全員がスマートフォンを持っているわけでもなければ、常にオンラインにいたいわけでもない。
また、世代を超えた言論や、包括性に着目することも重要だ。表層的な世代間の違いばかりに着目するのではなく、共通点を見つけることにこそ価値がある。安易なレッテルを貼ることは、世代間の対立を助長する可能性もある。例えば、「OKブーマー」(ベビーブーマー世代の時代錯誤な意見を揶揄する表現)や「生意気ミレニアル」(ミレニアル世代の時代遅れな上昇志向を嘲る表現)などのスラングにもその予兆が表われている。
また、若者を文化的な強い束縛から開放し、他の世代(私は高齢インフルエンサーのグランフルエンサーが大好きだ)がスポットライトを浴びている間に、Z世代にも一息つかせる必要があるだろう。
結局のところ、世代分析が掲げる特徴や特性の多くは、単に「若い」ということに起因している場合が多い。自己探求、揺れ動くアイデンティティ、進歩的価値観、権威への抵抗、現状への挑戦。これらはすべて、若かったときには、どの世代にも見られた特徴だ。
ほんとうにその世代に固有の特徴が何かあるのか、それともそれは、世代を問わず、常に若者文化に普遍的に存在するものなのか。ブランドにとっては、それを見極めることが鍵となるはずだ。
モリー・バース氏はスパークス&ハニーのカルチャー・ストラテジスト。