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P&GプリチャードCMO「DEIの取り組みはまだ十分ではない」
プロクター&ギャンブル(P&G)のマーク・プリチャードCMOが13日、VMLY&Rのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるウォルター・ギア氏との対談で、2021年のDEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みについて「変化があったが、十分ではなかった」と振り返った。
「考え方は大きく変わったと思います。業界全体でブランドによるコミットメントが見られました。元に戻すことはできません」。問題なのは変化のスピードであり、差別が社会に深く組み込まれていることが原因だと指摘。これに対してギア氏は、最大手の広告主であるP&Gには、多様性が乏しい広告会社との協業を拒否するなど、広告業界のDEIを変える力があると語った。
インフルエンサーの多様化は進んだか?
インフルエンサーのコンテンツについて、マーケターの62%が社会の多様性を適切に反映していると考えている。しかし一方で、そのように考えている消費者はわずか28%であることが、ニューヨークとロンドンに拠点を構えるインフルエンサー&ソーシャルメディア専門のエージェンシー「タクミ(Takumi)」のホワイトペーパーで明らかになった。調査は米国ならびに英国にて実施された。
「インフルエンサー・マーケティング業界のダイバーシティーとインクルージョンは、過去数年間で大きく進歩しましたが、改善の余地は常にあります」と語るのは同社のマネージングディレクター、サラ・ジョイ・マドセン氏だ。エージェンシーには多様性に富むチームを作り、BIPOC(黒人、先住民、有色人種)のインフルエンサーへの平等かつ公平な報酬を導入することなどが求められるという。「ブランドやエージェンシー、インフルエンサー間の誠実な対話において、ダイバーシティー&インクルージョンは常に中心に無くてはなりません」。
また、エンゲージメント構築に有効なメディアとして消費者が挙げたのは、ユーチューブ(56%)、インスタグラム(48%)、ティックトック(37%)であった。
カンヌのアカデミー、DEIコンサルティング会社を起用
カンヌライオンズは組織内のダイバーシティーを推進していくため、DEIを専門とするコンサルティング会社「アンミステイカブルズ(The Unmistakables)」を任命した。カンヌライオンズ開催期間に開かれる学習プログラム「ロジャー・ハチュエル・アカデミー」は今年5月、ディーンの一人であるアブラハム・アセファウ氏が職を解かれ、同氏が経緯をソーシャルメディア上で公開したことや、「カンヌライオンズで最も多様性に満ちた場」のディーンが全員白人になったことから批判が集まっていた。
アセファウ氏はCampaignの取材に対し、今回のコンサルティング会社の任命について「正しい方向性への第一歩」ではあるものの、行動が伴わなくてはならないとコメント。同氏が声をあげてから既に7カ月が経つが、これが初めてのアクションであることも指摘した。
気候変動の広告は検閲対象?
10月末から英グラスゴーにて開催されたCOP26に合わせて制作された、クアドラチャー・クライメート・ファウンデーション(Quadrature Climate Foundation)の広告が掲出を拒否されていたと英公共放送「チャンネル4(Channel4)」が報じた。この広告はCOP26の参加者に向けた力強いメッセージを、温暖化の影響を受けている人々の写真と共に訴求するもので、主要な空港や鉄道駅に掲出する予定だった。
「クリエイティブのコンセプトを最初に見せた時、皆から『ノー』を突き付けられました」と振り返るのは、制作を担当したアイリス(Iris)の最高戦略責任者、ベン・エッセン氏だ。「苦痛に満ちたクリエイティブで、人々をあたたかく迎え入れるものではない、邪悪で政治的すぎるとみなされたのです」。その後、キャッチフレーズを柔らかい表現に変更し、自然災害を生々しくとらえた写真も大幅にトリミングするなど、インパクトを抑えることでようやく掲出が認められたという。
Major UK airports and train stations watered down advertisements that showed the impact of climate change in the lead up to and during the COP26 conference in Glasgow because they were deemed “threatening and sinister”, Channel 4 News can reveal. pic.twitter.com/PolBqQh7d6
— Channel 4 News (@Channel4News) December 9, 2021
ギネス、コミュニティーをつなぐパブを支援
ギネスビールはホリデーシーズンに合わせ、仲間たちと楽しい時間を過ごすパブを支援中だ。3,000万ポンドを寄付した他、英国内のパブ22軒にライトアップを施している。「パンデミックで18カ月間大きな影響を受けてきたホスピタリティー産業のために、ギネスとしては地域のお店をできる限りサポートしていきたいと考えています」と語るのは、英ギネスを率いるニール・シャー氏。コミュニティーの中心で人々をつなぐパブを、資金面やそれ以外でもサポートを続けていくという。
今号が、2021年最後の「世界マーケティング短信」となります。皆さまには日ごろよりご愛読いただき、大変感謝しております。
どうか良いお年をお迎えください。2022年も皆さまのさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。
(文:田崎亮子)