みずほ銀行の「CM」がネット上で話題になっている。だが、当の銀行が望むような注目のされ方ではなかった。
この動画はVJ(ビジュアルジョッキー)としても活動する会社員の「Takayuki a.k.a Son」さんが個人的に制作したもので、ハリウッド映画の予告編にありがちな要素がふんだんに盛り込まれている。みずほ銀行のオンラインサービス休止期間を告知する内容で、停止前日の先週金曜日に公開された。みずほ銀行はこれまでも週末に複数回、システム移行を理由にサービスを休止している。
この「予告編」風の動画は、みずほ銀行のサービス停止により世界が破滅に向かう様子を描いたもの。現金を引き出せなくなったことで人々の3連休が台無しになり、世界が壊滅的な打撃を受ける中で、人々は現金を引き出す方法を模索する。7月に再び休止することにも、動画内では触れている。
この動画が多くの共感を呼んだことが、ツイッター上に寄せられたコメントからも分かる。ある者は「てっきりみずほの公式CMかと」勘違いしたとのこと。また「本家のCMで流すべき」という提案や、「下ろすの忘れた悔しさが少し和らぎました」といったコメントもあった。
【劇場版 みずほ銀行(予告編)】
— Takayuki a.k.a Son (@masayoshi1223sn) February 8, 2019
毎月恒例
「みずほ銀行のATM停止」を
映画の予告っぽくしてお知らせいたします。
停止までまだ4時間くらいあります。
安心して3連休中を過ごせるよう
今すぐATMでお金下ろしましょう!! pic.twitter.com/ao0l4urauT
リテールバンキングがもっと消費者に寄り添ったシステムへと改良する必要があることは、これまでもCampaignが過去3年にわたって実施したインタビューの中で専門家からたびたび指摘されてきた。だが、脅威となりそうな「ディスラプティブ(破壊的)」な新サービスはいくつか登場したものの、今までの運用方法を根底から変えなくてはという強い危機感は、銀行からはあまり感じられない。
「非常に面白い」パロディー動画だったと、オブザーバーとしてコメントするのは、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンのチーフ・クリエイティブ・ディレクター、ダグ・シフ氏。一方で、みずほ銀行は「格好の餌食」だったとも。
みずほ銀行のサービス休止は結局のところ、ブランドを損なったのだろうか。「最近、人々が銀行ブランドと最もよく接触するのは、ATMやオンラインサービス。そのため、一つが停止するだけで大打撃にもなりかねません」とシフ氏。「また日本は、中国などと比較すると現金払いが依然として根強い。そのためATMは、銀行の顔ともいえるのです」
つまり、影響はあったといえよう。だからといってみずほ銀行や他の大手銀行が大幅にサービスを向上させるまでの間(すぐ実現するとは思えないが)、これらの銀行に預け入れている人々が即座に取引を中止するとは考えにくい。みずほ銀行がもしサービス向上を実現しないのであれば、せめて自虐的なコンテンツを自ら制作して、ブランディングに活用することを検討してもよいだろう。ユーモアセンスのある銀行…、なかなか名案ではと思うのだが。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)