先週、Campaignは「アジアのトップ1000ブランド」2018年度版を発表した。今年のランキングでは、アマゾンとグーグルの順位が上昇。では、こうしたブランドは日本にどのような影響を与えているのか。答えてくれたのは、ジャレド・ブレイタマン氏。デザインコンサルティング会社「ソーシャル・モデルズ」を設立、マッキンゼー&カンパニーではアジア太平洋地域のエクスペリエンスデザイン担当バイスプレジデントを務めた。現在は東京とサンフランシスコに拠点を構える。「米テック企業の存在は、日本企業の多様化に拍車をかけている」と同氏。その一例として挙げられるのが、今週ホームシェアビジネスに乗り出したパナソニックだ。
日本企業の変革の中で、米テック企業の存在をどのように見ますか?
米テック企業は既に、日本人の日常生活の中で一定の役割を果たしていると思います。ショッピングであれ、動画コンテンツであれ、はたまたソーシャルネットワークであれ、10年前なら日本企業しか提供していなかったようなサービスを創出している。現在の国内市場で奮戦している日本のテック企業は、LINEだけでしょう。
そうした状況は、日本の国内ブランドにとってどのような意味があるでしょう?
楽天は今、通信事業者として競争に参加しようとしており、ある種のダイナミズムを感じさせます。リクルートは米インディード社を買収した。状況は少しずつ変わっていくでしょう。日本企業にとって、今はジャンルを超えたビジネスに取り組む好機なのです。今後、ショッピングからホームエンターテインメント、そして雇用から決済に至るまで、企業の様々な“シフトチェンジ”を目の当たりにするのではないでしょうか。
日本の家電メーカーのイノベーションに対する取り組みをどう見ますか? また、どのような点に着目しますか?
ソニーの犬型ロボット「aibo(アイボ)」は、同社の人工知能(AI)技術の高さを存分に示しています。新たなことに挑戦する意欲、またそのための十分な能力の証でもある。aiboとヒトとの間で生じる情緒的関係は、衝撃的ですらあります。
でもそれはギミックにすぎないのでは?
もちろんそうです。しかしこうしたAIとのインタラクトが我々の未来を代弁しているでしょうし、ソニーがその最前線にいることはエキサイティングです。aiboの発表はソニーにとって重要な出来事だと思います。ニューヨークやサンフランシスコにいる私の同僚たちも、強い関心を抱いている。ソニーの製品にこれほど注目が集まるのは、ウォークマン以来でしょう。
それとは別の話ですが、パナソニックが「レインボープライド」のスポンサーになったのには驚きました。パナソニックは包摂性と多様性を真剣に推し進めている。10年前と比べると、大きな変化です。当時はこうした姿勢は海外ブランドに限られていましたが、今では日本のブランドも増えた。非常に明るいニュースです。
「トップ1000ブランド」でパナソニックはアップルを凌ぎ、日本のトップブランドとなりました。アップルが状況を変えるには、何をしなければならないでしょう?
私はアップルの熱烈なファンではありませんが、決済方法など、新しいことに挑戦すべきでしょう。つまり前述のように、ジャンルを超越することです。アップルは日本で多額の投資をしているので、新事業を始めるのではないでしょうか。個人的には、高級デバイスを生み出せると思います。ただ、グーグルやアマゾン、フェイスブックといった他の米テック企業に比べてダイナミックな印象がありません。マイクロソフトですら、よりオープンな姿勢を打ち出すことで見事な復活を遂げた。アップルはマーケティングに長けており、強いブランドイメージもある。こうした挑戦のための土壌は整っていますね。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)