
世界一高額といわれるスーパーボウル(アメリカンフットボールの優勝決定戦)のCM枠が、過去最高額を更新した。際立つアイデアや豪華な出演者で毎年話題になるCM枠だが、異彩を放っていたのが製薬大手のファイザー(Pfizer)とノバルティス(Novartis)のがんを扱った60秒CMだ。
2年連続で出稿したファイザーのCMで、今回使用された楽曲「Mama Said Knock You Out」は、LLクールJの1990年のヒット曲。妻のシモーヌ・スミスは2004年に発症した軟骨肉腫(骨に発生する希少がん)を克服した。2人はファイザーと提携し、がんの早期発見の重要性を呼び掛ける。
ノバルティスのCMは、女性の胸にフォーカスした内容になっている。最後に登場するワンダ・サイクス(女優・コメディアン)は、乳がんサバイバー。NFL選手と婚約中のヘイリー・スタインフェルド(女優・歌手)や、選手と結婚したクリスティン・ユズチェック(ファッションデザイナー)も出演する。
ユズチェックは親を乳がんで亡くしている。ノバルティスの最高マーケティング・顧客体験責任者のゲイル・ホーウッド氏によると、乳がんによる影響を受けた人物をアンバサダーに選びたいと考え、同氏の起用を決めたという。
スーパーボウルは年間で最も視聴率の高いイベントだが、製薬会社が積極的にCMを放送してきたわけではなかった。だが多くの女性視聴者にリーチでき、健康にかかわる行動を促せることを重視したとホーウッド氏は語る。「ただスーパーボウルで目立ちたかったわけではありません。注目を集めることで人々がメッセージを受け取り、行動を起こしてほしいのです」。
(文:田崎亮子)