ヴァイス・メディアが、グローバルビジネスを目指す総合代理店「ヴァーチュー・ワールドワイド」を設立した。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、広告やコンテンツの分野で買収した企業を一つに統合したという。
ヴァーチュー・ワールドワイドの拠点が置かれるのはニューヨーク。ラース・ヘミング・ヨルゲンセンCEOのもと、450名規模のスタッフで30ヶ国以上の市場にサービスを提供していく。
新会社はヴァイス・メディアのインハウス・クリエイティブエージェンシーと、デジタル及びモバイル特化型エージェンシーを一体化したもの。ヴァイス・メディアが株式の過半を所有するファッション専門のクリエイティブエージェンシー「スターワークス・グループ」、ブランドコンテンツ・エージェンシー「パルス」の2社とも密接に連携していく。
ヴァーチュー・ワールドワイドの設立は、従来型の広告代理店グループで進む統合の動きをよく映し出していると言えよう。例えば昨年、ピュブリシス・グループはグループ企業をより効果的に連携させるため、傘下の代理店を一体化したピュブリシス・ワンを設立。またオグリヴィは、グループ内のサブ・ブランドを廃止し、中央集約型の組織再編に乗り出す決定を1月27日に出したばかり。
だがヴァイス・メディアの新会社は、これらの統合とは少々趣を異にする。何より同社の基本はメディア企業で、広告主の若者向けコンテンツ制作の支援に注力していく。消費者へのリーチ拡大のためテレビ広告が最重視された時代に地位を確立した代理店やブランドにとって、若者へのアプローチはいまだに極めて難しい課題なのだ。
ヴァイス・メディアは「従来型広告代理店のビジネスを妨害するつもりはない」というが、コンテンツ制作の分野で一段とレベルアップした競争をもたらすことは間違いない。同社が若年層の消費者と密接で、彼らのメディアに対する嗜好や接し方をよく理解していることを考えると、成長を続けるマーケティングサービスの領域に強力なプレイヤーが現れたことになろう。
一方で、同社は批判にもさらされている。昨年、ロンドンを拠点とする子会社のエディション・ワールドワイドは、フィリップモリスの世界的ブランド「マールボロ」のコンテンツを制作していることを発表した。これに対し複数の禁煙団体から、若者向けの情報配信を手がける企業グループとして無責任、という声が上がっている。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:水野龍哉)