Ryoko Tasaki
2021年6月04日

世界マーケティング短信:大坂選手の棄権に反響、化石燃料企業の広告に逆風

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

全仏オープンの1回戦で戦う大坂なおみ選手(写真:Getty Images)
全仏オープンの1回戦で戦う大坂なおみ選手(写真:Getty Images)

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
 

全仏オープン棄権の大坂なおみ選手に応援メッセージ

テニス全仏オープンの記者会見に応じなかったため主催者側から罰金を科された大坂なおみ選手が、その後メンタルヘルスの問題を告白し、「皆が大会に集中できるように」と大会を棄権することを発表した。このことに、さまざまなスポンサーや著名人がコメントを寄せている。

2019年から大坂選手とスポンサー契約を結ぶナイキは「我々の思いはなおみと共にある。我々は彼女を支え、自身のメンタルヘルスの経験を共有した彼女の勇気を称える」との声明を発表。マスターカードも「個人の健康と幸せを最優先することがいかに大切か、思い出させてくれる」とツイートした。

セリーナ・ウィリアムズ選手は会見で「気持ちが分かる。ハグしてあげたい」、そして人の性格はそれぞれ違い、物事への対処方法も違うため「彼女が最善と思う方法で対処させてあげられれば」と述べた。

 

広告が環境破壊に加担!? 問われる覚悟

環境広告は人々の意識を高め、企業姿勢を伝えてブランド価値を向上させる。だが広告によって誤った情報が拡散し、気候変動対策を阻んでいるとしたら……?

昨年秋に米国で発足した団体「クリーン・クリエイティブス」はレポートで、主要な広告会社と化石燃料関連企業との関係を公表している。だが「業界内で働く者にとっては、目新しい情報ではない」と語るのは、フテラ・サステナビリティー・コミュニケーションズの共同設立者で、今年カンヌライオンズで審査員も務めるソリティア・タウンゼント氏だ。

同氏は、広告・コミュニケーション業界のビジネスモデルは「破壊ではなくソリューションによって儲ける」ものへと抜本的に見直す必要があると説く。その例として、5月にアムステルダム市の地下鉄駅で化石燃料関連の広告掲出が禁止となったことや、化石燃料のマーケティング施策に(たばこの包装にあるような)警告表示を付記するよう働きかける法律家の団体などを挙げる。また、ピュブリシスがオピオイド依存症の深刻化に加担したとして訴訟を起こされているように、「今後は環境破壊に加担した広告会社が訴えられる可能性がある」とも指摘した。

 

47都道府県から1名のオンラインインターン、今年も募集開始

電通と、大学生のキャリア支援団体「エンカレッジ(en-courage)」が共同で開催するオンライン型インターンシッププログラム「47 INTERNSHIP」が募集を開始した。47都道府県から1名ずつ(計47名)の学生と、複数の企業が参加するこの取り組みは2020年に始まり、D&AD賞のブランディング部門でイエローペンシルを獲得している。昨年のテーマは「ニューノーマル時代にとるべき企業の行動や振る舞い」だった。エントリーの一次募集は7月1日、最終締切は7月15日。その後8月末からの計3日間、オンラインにて課題に取り組む。

 

アップルの新OSリリース以降、Androidの広告費が増加傾向

アップル社がプライバシー保護を重視し、ユーザー追跡機能を制限した最新のiOSを4月末にリリースして以降、iOSへの広告費が減っていることが、WARCとアップスフライヤー(AppsFlyer)の調査で明らかになった。その一方で、Androidの広告費は大幅に増加している。

3月末以降はAndroidとiOSの両方で広告費が減少したが、iOSのリリース日が発表された前後で、Androidの広告費は3月末の水準を超えるまでに増加。対するiOSは5月末にようやく、3月末と同等の広告費にまで持ち直した。詳しくはこちら(英語)。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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