この調査は昨年12月、日本のデジタル広告業界の専門家125人を対象にオンラインで行われた。回答者の内訳は広告主・ブランド(回答者全体の22%)、広告代理店(18%)、デマンドサイドプラットフォーム(12%)、パブリッシャー(11%)など。
これらの専門家が最も重視するメディアは、モバイル(60%)。今年、携帯型デバイスを介してメディアを消費する国内インターネットユーザーは81.2%に達し、モバイル広告費は前年比10%増の1兆7000億円超、日本のデジタル広告費全体の4分の3近くを占めると予想される。
モバイルの次に多く挙げられたのは、デジタル動画(53%)。動画視聴者は総人口の3分の2に迫る7700万人まで伸び、デジタル動画広告費は24%増、4800億円超になるとの予想だ。3番目に多かったのはソーシャルメディア(45%)で、ソーシャルメディア広告費は17%増、7000億円近くになるという。
業界が直面する課題としては「サードパーティクッキーの非推奨化」(38%)、「データプライバシー関連規制」(27%)、「キャンペーンにおけるROI(投資利益率)の正確な測定」(26%)などが挙げられた。
広告費の増加につれて専門家の間で懸念が高まっているのが、アドフラウドだ。回答者の73%が「モバイル環境における最大の懸念事項」に挙げた。また、74%は「広告付き動画の在庫量増加につれ、デジタル動画でもアドフラウドはより深刻な課題になる」と答えた。
一方、ソーシャルメディア広告で最も重要な評価基準として挙げられたのはビューアビリティ(54%)。加えて39%は「アドフラウドに対する脆弱性を懸念している」と答えた。また、ソーシャルメディアは「透明性が欠如している」(46%)、「消費者の信頼低下を招いている」(39%)という声も多く上がり、共に「広告支出を見直す重要な要因になる」とした。
ブランド毀損リスクに関しては、コネクテッドTV(CTV)環境におけるブランドリスクは「CTV在庫量とCTV販売数の増加につれて増していく」(71%)。モバイル環境やソーシャルメディアのブランドリスクに対する脆弱性も懸念されている(それぞれ50%、26%)。こうした状況から、「第三者による検証が重要」とした回答者はモバイル環境で71%、デジタル動画環境では79%に上った。また、アドフラウドやブランドリスクの削減に関して「最も責任を負うべきはパブリッシャー」という意見が多かった。
IASは「アドフラウドやブランド毀損リスクを回避するためには、バイサイド(広告主)とセルサイド(メディア)の双方が広告検証プロバイダーと密接に連携し、チームとして各々が役割を果たしていくことが求められる」と記す。
「従来型のテレビ放送からデジタル動画に移行することで、より主導的役割を果たすのは消費者。広告主は今後、広告付き動画をテレビ広告同様に扱い、広告検証ソリューションを活用しながらアドフラウドやブランドリスクを回避していかねばなりません。JICDAQ(一般社団法人デジタル広告品質認証機構)のイニシアティブなどによる新たな取り組みが、業界にポジティブな変化をもたらすと確信しています」(同社日本カントリーマネージャー、山口武氏)
(文:水野龍哉)