Jerone Larson
2021年7月22日

B2Bの合理性とB2Cのクリエイティビティの融合とは

ブランドは、これまで以上に顧客を動かすものを明らかにし、適切な人々に最適なコンテンツを開発して、そのコンテンツを適切な時間と場所で提供し続ける必要があると、VCCPのB2B担当者は指摘する。

B2Bの合理性とB2Cのクリエイティビティの融合とは

感性に訴求するコミュニケーションで、注目を集めることが多いB2Cマーケティングに比べ、B2Bマーケティングは、一般的に合理性を重視し、華やかさではB2Cに劣る従兄弟のような存在だと考えられてきた。

B2Bマーケティングは、販売サイクルが長く、予算も小さく、多くの構成要素を管理する必要がある上、直接的なROIを直ちに実証しなければならないというプレッシャーがあり、これまであまり注目されてこなかった。

しかし、デジタルやソーシャルの体験が一般的となり、B2Bでもパーソナライズされた体験を望む声が増え、ついにはミレニアル世代の意思決定者も現れ始めたことで、B2BとB2Cのマーケティング戦略はだんだん融合し始めている。

ブランドはこれまで以上に、顧客のニーズを把握し、適切な人々に最適なコンテンツを開発して、そのコンテンツを適切な時間と場所で提供する必要がある。こうした戦略的アプローチは、B2B市場の変化と相まって、B2Bマーケターにとっては有利に働くだろう。というのも、B2Bはすでに多くの側面で、これらの道を切り開いてきたからだ。

データが導くインサイト

データドリブンのインサイトは、B2BやB2Cのブランドが顧客の考え方や関心事をより良く理解するのに役立つ。B2Bマーケティングの担当者はこのことを以前からよく知っていた。かつての展示会では、担当者はリード(見込み客)のリストを持っていて、顧客に合わせて製品をアピールすることができた。その後、新たなテクノロジーの導入により、B2B企業はデータドリブンのインサイトを活用し、顧客のプライオリティやニーズ、課題に合わせたプロモーションコンテンツを制作できるようになった。

IBMは、データとインサイトを活用して、営業チームが顧客を魅了するトークを行えるよう支援している企業の代表格だ。2017年に始まった「インテリジェント・リスニング」と呼ばれるプログラムでは、顧客のリアルタイムの会話やアクションに基づくソーシャルリスニングを活用して、クラウドコンピューティングに関するテーマや話題のトレンドを把握していた。これらの情報は営業チームに提供され、彼らが行っている商談に沿ったコンテンツも共有できるようにした。その結果、その四半期の製品受注数は前年同期の4倍となった。

コンテンツがカギに

ソーシャル体験やオンライン体験の台頭に伴い、B2Cのマーケターは、市場開拓戦略におけるコンテンツマーケティングのメリットを十分に認識するようになった。それには、既存顧客のロイヤリティ醸成や新規顧客獲得につながる、インフルエンサー動画やユーザー生成コンテンツの拡散から、チュートリアルやガイドビデオの提供までが含まれる。

しかし、コンテンツマーケティングインスティチュート(CMI)の調査レポートによると、B2Cのマーケティング担当者のうち、カスタマージャーニーの個々の段階に合わせて、コンテンツを工夫しているものはわずか半分程度で、制作されたコンテンツの半数近くは、エンドツーエンドのカスタマージャーニー全体をカバーするものではなく、ただ認知度を高めることだけに注力しているという。

一方、B2Bマーケティングでは、販売サイクルが長く、多くの構成要素が関わっているため、コンテンツは常に重要な役割を担っている。実際、世界で最も古いコンテンツマーケティングは、1895年に農機ブランドのジョン・ディア (John Deere) が発行した農家向け雑誌『The Furrow』にまでさかのぼる。

B2Bのマーケターは、ターゲットが中小企業であれ大企業であれ、コンテンツを活用することで、見込みのあるB2Bバイヤーを引きつけ、エンゲージし、啓発し、情報を提供し、育成し、最適なリードに変えることができる。さらに、B2Bマーケターは、顧客のニーズに応えながら、コンテンツによって、ブランドストーリー、パーパス(存在意義)、ソリューションも伝えることができる。

T-モバイルの「マゼンタ・エッジ(Magenta Edge)」を例に挙げよう。T-モバイルは顧客中心のコンテンツアプローチを採用し、加入者や視聴者のために、価値の高い教育コンテンツプラットフォームを構築した。このコンテンツプラットフォームでは、起業家に向けた教育プログラムやオリジナルストーリー、インサイト等を提供している。


コンテンツマーケティングの全体的な目的は変わっていないが、B2BとB2Cのブランドがオーディエンスにエンゲージするために制作できるコンテンツの種類は飛躍的に増えた。さらに、より多くのデータにアクセス可能になったことで、B2BブランドもB2Cブランドも、カスタマージャーニーの各段階で、よりオーディエンスの共感を呼ぶコンテンツを制作できるようになった。データとコンテンツ、この2つを組み合わせることで、B2Bブランドには、既存のコンテンツ戦略を発展、最適化する無限の可能性が拡がるだろう。

顧客がいるところで展開する

魅力的なコンテンツを制作するだけでなく、そのコンテンツを見てくれる顧客や影響力のある集団がいるところに、それらを供給することも重要だ。

データは、コンテンツに関するトピック情報だけではなく、意思決定者がどこでコンテンツを閲覧したかを具体的に把握することにも寄与する。マーケティング予算の削減により、B2Bマーケターは、予算を最大限に活用するためのより独創的なソリューションを見つけるよう求められており、ターゲットを絞った無駄の少ないメディア選定のためにデータに依存してきた。これは、1800年代初頭にB2B企業が業界誌に広告を掲載し始めたことに端を発している。さらに1870年代には、鉄道網の発達により、B2B企業はダイレクトメールという、よりターゲットを絞った方法で顧客にアプローチできるようになった。モンゴメリー・ワードのメールオーダーによる通販ビジネスは、ターゲットを絞ったB2Bマーケティングの最初期の事例だ。

モンゴメリー・ワードの通販カタログ


このようなメディアの無駄を抑えたターゲティング戦略は、現在のB2Bの世界でも、アカウントベースマーケティングやCRM戦略を通じて有効に活用されている。ゼロックスの「Get Optimistic(楽観的になろう)」キャンペーンでは、限られた重要顧客リストに絞ってターゲット広告が実施された。このキャンペーンでは、意思決定に関わるエグゼクティブや従業員にリーチするため、広範な一律の戦略ではなく、見込み客のニーズと閲読するコンテンツに集中した、よりパーソナライズされたアプローチが採用された。ゼロックスは、フォーブスとのパートナーシップや継続的なメールコミュニケーションなど、キャンペーンにおいて重要なプラットフォームに注力した。

最近のB2Bの傾向はB2Cのトレンドを踏襲している面もあるが、B2Bマーケターは、意図したオーディエンスへのリーチを成功させてきた、これまでの革新的な戦略に忠実であり続ける必要があるだろう。両分野の境界線はますます曖昧になっているが、B2Bの革新的な戦略とB2Cのクリエイティビティを組み合わせることでさらに可能性が広がり、B2Bビジネスは体験主導型経済の中で素晴らしいエクスペリエンスを生み出せるだろう。そうした実践を通じて、B2B企業はさらにブランドプレゼンスを強化し、顧客エンゲージメントを高め、収益を伸ばすことができるだろう。


ジェローン・ラーソン氏はVCCPのB2B部門責任者。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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